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第8話
ー12年後ー
「あおーげばーとおーとーしーわーがーしーのーおんー」
「うぅ……涙で前が見えねえぜ……」
「まさか俺らの息子が、小学校の総代を務める日が来るなんてねぇ、アニキ……」
「ああ。トンビが鷹を産んだたぁ、このことよ……」
ー15年後ー
「何だよボン、そわそわしやがって。パパにも言えねぇことがあんのか? いいから言ってみろって」
「ちょっとアニキ、思春期なんだからそっとしておいてあげて下さいっスよ! グレて俺らみたいになったらどうすんスか! ……ボンは今日、彼女と初デートなんスよ。いいから見守ってやりましょうよ」
ー25年後ー
晴れやかな結婚式場。
二人の尽力で立派に成人したボンは、新郎とともに新たな門出の時を迎えていた。
「僕がここまで来られたのは、お父さんとお父さんと、お母さんのお陰です。お父さんたち、あの時僕を誘拐してくれて、本当にありがとう。お二人がいなかったら、今の僕はありません。今まで大変お世話になりました。そしてこれからも宜しくお願いします!」
時おり涙を交えてスピーチを終えたボンに、盛大な拍手が上がった。
「それではここで、お母さまにもお言葉をいただきましょう!」
司会がママンにマイクを渡す。
「こんなに素晴らしい日を迎えられて、本当に、何と言ったら良いか……。あの子をここまで立派に育てて下さったお二人には、感謝しかありません。この恩に報いるのにはとても足りないとは存じますが──感謝の気持ちを込めて、私からお二人に晴れて身代金をお渡ししたいと思います!」
ママンは『2000万』と記された小切手をヤスとアニキにうやうやしく手渡した。
二人は顔を見合わせると、微笑みながらボンに向かって歩き出した。
そして、小切手をボンに渡した。
「この金はお前のものだ、ボン。お前がいてくれなかったら、俺もヤスもきっとロクな人生送っちゃいねえ。ボンのお陰で今があるんだ。本当にありがとな」
「うう……お父さん、お父さん、ありがとう……!」
式場は割れんばかりの拍手に包まれた。
「でよ、ヤス……。おめえにも、言わなきゃなんねえことがあってよ」
「え、なんスか? 改まって」
「これだよ。受け取れ」
アニキの手の中には、プラチナと思しき指輪が収まっていた。
「あ、アニキ……」
「へへっ、わりぃな、待たせちまって。ボンより先に幸せにゃーなれねぇと思ったのよ」
こそばゆそうに鼻を啜るアニキを、ヤスは満面の笑みで抱きしめた。
完
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