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第25話 赤髪編 円盤
第二章
ちょっとダークな感じになります。
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パソコンの前で突っ伏していた。
――俺はゲイなんだろうか。
ミチにこんなに強く、惹かれてしまうなんて。
窓を開ける。
麦わら帽子を被った水銀スライムが雑草を抜いていた。
「なあ、ミチ。ミチって性別とかあるの?」
「うーん……。オスとメスには当てはまらないぞ」
性別ミチってこと?
「俺のことオスだと思ってる?」
「うん。だって男に化けてるし。普段」
「それがどうかしたか?」
ぷよぷよ弾みながらこの星にはない生命体が近寄ってくる。可愛いな。
窓の縁にもたれかかる。
「いや~。ミチのことが気になってさ」
「解剖はしないでくれよ」
からかうように笑うと、雑草を根っこごと抜いていく。丸いボディで力強いな。
「働き者だなぁ。暑いんだし、無理するなよ」
「そこまで暑くない。もっと、二百度とかを予想してた」
流石にそこまで暑くはならんよ。山奥だし。
二百度からマイナス二百まで平気ってことか。
ミチのことが気になってしまう。
「円盤のなかとか、見てみたいな」
なんとなく呟いただけだった。
「そう? アー……ルンバさん。円盤を持ってこられない?」
ミチがジャージ青年姿になると、窓から入ってこようとする。ぶつからないように一歩下がった。床が汚れるのを気にしてか、ミチは窓縁に腰掛けた。
『お呼びでしょうか?』
「うわっ!」
ベッドの下からすんっとルンバさんが出てくる。え? そこに居たの? いつから?
「円盤を不時着した山に戻してくれない?」
『かしこまりました。スリープモード解除。遠隔操作します』
「え、ちょ」
俺が口を挟む間もなく、実行された。
ミチは屋根に腰を下ろし、俺は窓辺から空を探す。ルンバさんは用が済んだとばかりに部屋掃除を開始する。ありがとうね。
「操縦っていつも、ルンバさんに任せてるの?」
「手が離せないときは変わってもらっている」
屋根から声が降ってくる。
しばらくすると、南の空から白い光が流れた。山の頂に落ちていく。テレビの映像と全く同じ光。動きはスムーズだったが。
「調べてた人たち、驚いてるだろうな」
「適当に山に置いたが、見に行くか?」
屋根に足を引っかけ、逆さまになったミチが窓をノックしてくる。蝙蝠かお前は。
「ルンバさんも連れてくの?」
「留守番しててくれるよ。おいで」
差し出された手を掴む。ぐんと引っ張られ床から足が離れる。俺の身体は軽々と外に放り投げられた。
「――わっ」
空と地面が交互に見えたかと思うと、腰から落下した。すぽっとミチの両腕に収まる。
「……急に放り投げないで」
「すごいな。ほとりの心臓の音が聞こえる」
「びっくりしたんだよ!」
横抱きのままでは恥ずかしいので降りようとしたが、靴がない。と思ったら窓からルンバさんが靴を投げてくれた。ありがとう。めっちゃ気が利くじゃん。お掃除&お留守番ロボットとは思えない。
靴を履くと、ミチがブーブーと文句を言い出す。
「靴履かなくても、俺が運んでやるのに」
「靴は履かせて。さ、出発」
ミチの背中に乗っかる。目を点にしたが、ミチの顔には笑みが広がった。俺の両足を抱えると、山に走って行く。
木漏れ日の道を駆ける。
俺がキノコ狩りの時に使う山道をまったく無視して、獣道や枝から枝へと、忍者のように突っ切る。
「運動神経いいね」
「ほとりがそうやって、俺のことで喜んでいる声、好きだな。俺も嬉しくなる」
イケメン台詞を吐くな。イケてるのは顔と体格だけにしとけ。
「……」
「照れると黙り込むところも分かりやすくて好ましい」
「もうやめて‼」
銀の髪に顔を埋めているとミチが着地した。
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