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夏の一幕  ピーマン

 そっぽを向いてしまった。俺に抱きついたまま。 「ほとり。クラゲ太郎。一通り焼けたもの持ってきたぞ」 「あ、サンキュー。ミチ」 「クラゲ太郎って誰だよ⁉ 俺かアァン⁉」  紙皿と割り箸を受け取って、可愛斗を引っ付けたまま地面で食べる。ミチが草刈りをしてくれているおかげで、芝生のようで座りやすい。  俺が木陰で食べているせいか、ミチも地面に尻を下ろす。  せっかく倉庫から出したキャンプテーブルと椅子が暇そうに日光浴している。  可愛斗が俺の皿にピーマンを乗せた。 「ピーマンあげる」 「まだピーマン食べられないのか?」 「うるせぇな! 誰だよバーベキューでピーマン焼いたやつ!」  ミチが無言で挙手している。 「バーベキューは肉オンリーが正義だろ」 「野菜食べないと腹出てくるぞ。お前、またぽっちゃりに戻るぞ」 「その時はほら、またほとりがダイエット料理を作ってくれればいいだけだろ?」  満面の笑みの皿によく焼けた玉ねぎを置いてやる。 「なんで⁉」 「ピーマン食ってやるから、玉ねぎ食べなさい」 「うう……」  可愛斗が縋るようにミチを見る。  だが相手はミチだ。 「なんだ? 玉ねぎ欲しいのか?」  見事に勘違いして可愛斗の皿に玉ねぎを重ねた。 「……」  撃沈した可愛斗を不思議そうに見ている。 「可愛斗はどうしたんだ? あんなに喜ぶなんて」 「んふっ。しかし八月頭でここまで暑いとはね。ミチはプールとか、行きたい? 室内のプールだけど」  ミチが麦わら帽子を俺の頭に被せる。 「プールか。塩水の方が好ましいが、一度行ってみたいな」  ミチの頭に帽子を返す。 「ありがと。じゃ、また予定組むか」 「え、帽子いらなかったか?」 「眩しいんです。銀が」  泣きながら玉ねぎを齧っていた可愛斗も手を上げていた。 「ほとりは白スク水とか着るのか⁉」 「着ねぇよ」  

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