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夏の一幕 ミチならいい

 お掃除ロボットに何を聞いているんだろうか。AIなんだから「すみません。よくわかりません」って言うに決まってるだろ。というか、そもそも俺はなんて言ってほしいんだ。  自分でも、分からないってのに。  膝を抱えて、小さなため息をつく。 『おや。ほとり様。ミチ様のことをお気に召したのですか? お目が高い。喜ばしいことです。私は応援しておりますので、ミチ様のこと、よろしくお願いしますね』  ベッドの下を覗き込んだ。 「ルンバさん⁉ めっちゃスラスラ喋ってるけど……あれ? 賛成派なの⁉」 『どうか、何も気にせず存分に、自分の心と向き合ってくださいませ』 「……うっ、でもさ」 『たとえ神でも止められません。恋心と言うモノは。神でもどうしようもできないからこそ、地上から恋の歌や恋の話がなくならないのです。たくさん考え、迷ってください。ほとり様』  ベッドの下にいるのは本当にAIなのだろうか。中に人が入っているとしか思えない。 「あ、ありがとう。ルンバ、さん?」 『どういたしまして。ほとり様。あと二十分ほどで、可愛斗様がお戻りになられます』 「なんで分かるの? 見えてる? 何が見えてるの? ちょっと出てきてお話しない?」  両手を伸ばしていると、照れが収まったミチが戻ってくる。 「すまない一人にして。……ベッドの下に何か転がったか?」 「なあ、ミチ。ルンバさんって、中に人入ってたりしない?」 「何を言ってるんだ?」 「だから――」  ルンバさんに相談していた→何を?→ミチのことが好―― 「よしっ。ラジオ体操でもしてくるわ」  部屋を出ようとして腕を掴まれる。 「待て待て待て。意味が分からない。俺に説明してくれ。ルンバさんがどうした?」 「もういいです‼」 「なんで敬語?」  大きい手が、腕を掴んでいるというだけで気恥ずかしくなる。振り払おうとするも、力負けして引き寄せられた。  胸の中に閉じ込められる。 「こうしておけば、逃げられないな」 「……」 「あ! うぅ」  俺が無言で腕を回すと、自分が何をしているのか気づいたらしい。勝ち誇っていた顔に困惑が滲む。目線で助けを求めるも、ルンバさんはすぃっと引っ込んでいった。  援軍を見込めないと知ると、つむじに青瞳を下げる。 「……すまない。気安かったか? 触られるのが嫌と、言っていたのにな」 「別にいいよ。いつでも、可愛斗みたいにくっついてきて、いいよ。ミチなら、いい」 「そう、か。うれ、しいな」  暑さで汗をかかないのか、ミチからはなんのにおいもしてこなかった。

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