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第1話 負い傷のせい。(1)

海賊船ブラックシャーク号のキャプテン・セシルの部屋は船体の前方の方向に存在する。 その部屋の主、セシルはベッドの中で昼寝をしていた。 ブラックシャーク号が活発に動き出すのは殆どが夕方からが多いので、この時間帯は本寝というべきかもしれない。 すっかり夜型体質になっているセシルがこの時間帯に起きていることはあまりない。 極稀に起こしにくる者の存在がなければぐっすりだった。 ドンドンと少々乱暴気味にドアを叩く音で目が覚めたセシルは、そのまま声を上げた。 「……誰だ」 セシルの声はとても不機嫌そうだ。 誰だって熟睡してるところを起こされれば機嫌は悪くなるが。 「俺です」 馴染みのある声に、セシルは溜め息を吐いてから返事をする。 「入れ」 するとその声の主は部屋の鍵を持っていて、鍵を開けてから音も静かにドアを開け部屋に入った。 部屋に入ってきたのは、シャドウキャプテン・レイズナーだった。 要するに彼はキャプテン・セシルの影武者。 「なんだ。俺は眠い、……用件だけ聞く」 「昨日、あんたのために働いた褒美を貰ってないから、受け取りに来ました」 レイズナーはそう言うと、セシルの寝転がるベッドに身を預けた。 「若いって良いな、レイズナー?……今は相手する気力もねぇよ」 「あんたは寝転がってればいい。勝手に貰いますんで」 そう言いながら、セシルの着ている服の紐を解いていた。 「マグロって訳にはいかないだろ?褒美だからな」 「マグロでもいいですよ、あんたなら」 レイズナーの手がセシルの服の下に侵入し、程よい胸筋を撫でた。 セシルは何故レイズナーが自分に手を出すのか、理解できなかった。 セシルは枕元にある大きめの砂時計を引っくり返した。 この砂時計が落ちきるまでの時間、セシルはレイズナーの所有物となった。

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