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第2話 負い傷のせい。(2)
ことの始まりはレイズナーがキャプテン・セシルの影武者となってからだった。
海賊の世界でセシルが有名になりすぎたころ、セシルに自由になる時間はなくなった。
名前が一人歩きしている、そしてセシルの偽物が出て人々を襲うようになっていた現実は悲惨だった。
略奪や人殺しなども出てきた頃、妹分のシルビーから影武者を立てたらどうだろう、という意見が出たのだ。
セシルの容姿は、とても美しかった。
そして右目に傷痕がある人物など存在しないと、この件は白紙になりかけたいた。
そのときにこのブラックシャーク号に、キャプテン・セシルの仲間になったばかりのレイズナーを見付けたのだ。
セシルはレイズナーを自分の影武者にすることに乗り気ではなかったが、レイズナーはその話に乗ってきたのだ。
初めは右目を隠しセシルの影武者、シャドウキャプテンを演じていた。
だがレイズナーは完璧を求め、セシルと同じように右目に大きく傷を入れた。
その負い目もあって、褒美と称してセシルはレイズナーに自分を好き勝手する時間を与えるようになった。
最初のうちは、キスや抱擁で済んでいたものの、今ではこの短時間で身体を繋げるまでの関係になってしまっていた。
女役のセシルは受け入れ始めた当初、尻に不快感を覚え、痛みばかりだった。
しかし受け入れ始めた途端に身体が快感を感じ初めて、よがり乱れることを覚えた。
故にマグロ状態でも、セシルにとっては消耗することなのだ。
けれどセシルはレイズナーを受け入れた。
拒むことなど、抗うことが出来なかった。
右目の傷の負い目だ、セシルはそう思うことにした。
本心は違う、そう思わないと自分が男に抱かれていることを素直に受け入れられなかった。
「セシル、……あんたが好きだ」
優しいキスなど、この行為にはいらない。
好きだとか、そんな言葉は必要ないのに、レイズナーはこの行為の最中何度も口にした。
俺にはそんな感情はない、そう言えればいいのに。
しかしセシルは言えずに、この行為に溺れていた。
レイズナーとのこの時間は、セシルにとって必要なものになっていた。
そんなことを感じるようになっていた自分に嫌気がさした。
この言葉に答えたら、自分のプライドが許せない。
そしてこの行為が嫌いだと思えない自分自身が嫌だった。
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