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第1話

この世には第二次性(バース)というものがある。 α、Ω、βと言う奴だ。 ご存じの方もいると思うので説明は割愛したい。 Ω性というものは、今では忌み嫌う様な性ではないという認識に世間は変わりつつある。 それでも、本能的にαやβからすればΩは厄介な性だろう。 Ωにも人権があり、蔑んでいい性ではない。 そう認識が改まったことで、Ωを傷つけたαやβは厳しく罰せられるようになった。 なのに、Ωは変わらずに惑わす性である。 だからこそ、彼らにとってΩは避けたい性であり、関わりたくないのだ。 僕には幼稚園からずっと仲良くしてきた幼馴染がいる。 園田太陽。 明るく活発で、引っ込み思案な僕をぐんぐん引っ張って外へ連れ出してくれた。 彼のおかげで、僕は幼稚園や小中学校で孤立せずに済んだ。 すごく良い子で、好きなゲームやアニメの趣味も合った。 何より、僕は彼のことが大好きだった。 中学生の時に、国民はバース性の検査を受ける。 それは世間でも一般的なことで、僕も受けることはずっと前から知っていた。 太陽はきっとαで、まあ万が一があればβかもなと思っていた。 そして、僕はきっとβだ。 平凡を絵にかいたような人間だと、幼いながらに自覚していた。 バース性の検査が近くなり、学年全体がざわざわしていたころ、僕たちも必然的にバース性の話をした。 「太陽はきっとαだよなぁ」と僕が羨ましそうな声で言った。 「うーん、どうだろうな」 「僕はたぶんβだと思うもん」 「そう?」 肯定されると思っていた質問にそう返されて、僕は少し驚いた。 「あ、じゃあさ、もしも…、本っっ当にもしもの話だけど」 「なんだよ笑」 「もしも僕がΩだったらさ…、嫌いになる?」 僕がもしもβじゃなかった場合、考えられるのはΩだ… Ωは美麗で華奢な人が多いと聞くから十中八九あり得ない、と僕は思っていた。 「うーん…、そうだなぁ…。 統和(とうわ)はさ、俺の事好き?」 歯切れが悪くなった太陽がそう訊いた。 質問の意図が読めず、即答できなかったけれど、もしかしたら”Ωだったとして俺のことを狙うつもりか”という意図なのかもしれないと思った。 俺を惑わせて、番わせる気なのか、と。 まさかそんなわけない。 だから 「うん。友達として好きだよ! 太陽は僕の親友だ…、って勝手に思ってる」 と答えた。 そんな僕を太陽はジッと見る。 いつも笑顔なのに、やけに真面目な顔をしていたと思う。 「ふーん。だったら嫌かも」 「え?」 「統和がΩなの、嫌かも」 なんて答えたんだっけ、あの時… 自分がΩだなんて思いもしなかったから「だよね~」とか言って笑ったのかも。 その1ヶ月後くらい届いた診断書を見て、僕は頭が真っ白になった。 はっきりと「Ω」と書いてあった。 それから、高校に入学するまでの記憶はどこかぼんやりとしている。 バース性の特徴が現れるのには個人差がある。 Ωにはヒートがあり、それが始まったら本格的な性徴を終えたと言える。 だが、ヒートを学校で起こすわけにはいかない。 だから、Ωと診断された子は速やかに、Ω専用の中学校・高校へ行く。 といっても希少な性なので、全国にあるわけではなく、僕は引っ越しするか寮に入らねばならなかった。 かなりセンシティブな問題なので、多くのΩ達が転校を知らせずにひっそりと共学校を去る。 僕も例にもれず、先生にのみ伝え、クラスメイトや部活仲間には一切告知せずにひっそりと転校した。 幼馴染の太陽にも伝えていない。 言えるわけない。 太陽は僕がΩだったら嫌だと言ったのだから。 僕の家族は、僕が一人っ子であることやΩであることを心配して一緒に着いて来てくれた。 申し訳なかったけれどかなり心強かった。 だからか、なりたくなかった性だと診断された後も腐らずに生きてこれた。 勿論、ヒートは辛かったし、大好きな友達も失って悲しかったけれど。 高校生活をΩだけの学校で過ごし、特段問題が無ければ、大学からはまた共学に戻れる。 あまりにαのフェロモンに弱い子や、ヒートが安定しない子は、そもそも出願させてもらえないのだけれど。 大学で共学に慣れておかないと、社会に出ることはまず難しい。 Ωだけが集まる職種もあるけれど、救済措置であるため、収入はガクっと減る。 僕は、比較的ヒートも穏やかだし、抑制剤もよく効くため、大学は共学を選んだ。

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