31 / 31
第31話 最終話
ヒート明け、実家に帰るとお母さんに心配された。
1人で過ごすよりとても楽だったことや、番にはならずめちゃくちゃ高くて頑丈なネックガードをプレゼントされたことを伝えると、涙目で喜んでくれた。
「男の子のΩって本当に生きていくのが大変だから、私もお父さんも生涯統和を守り続けるって覚悟してたの。
でも、太陽くんがいて、統和が幸せそうで…、お母さんはそれだけでもう胸いっぱいだわ」
そう言われて僕も涙が滲んだ。
両親の覚悟と愛を感じたから。
中学生の頃、僕と太陽を引き裂いたΩという性を恨んだ。
でも今は…、恋人として、将来的には夫として、太陽の隣に立つことが出来るΩという性に感謝している。
涙をぬぐい、手早く支度をして、僕は大学に向かった。
7日ぶりの登校だ。
太陽が家の前で待っていた。
「さっきぶり」
そう声を掛けられて、今朝まで全裸で顔を合わせていたことを思い出して赤面する。
「もう…、お迎え来なくていいって言ったのに」と口を尖らせると、
「こんなに可愛いΩを1人になんて出来ないよ」と彼がまじめな顔で言う。
「少しでも会えるのは嬉しいけど、本当に無理はしないでね」
「無理なんかじゃないよ。
はぁ…、授業も一緒に受けたい…。
転学部しようかなぁ…」
「僕も寂しいけれど…、僕の幸せは太陽の夢が叶うことだよ」
太陽にはなりたい職業があって、今の学部に入ったことを知っている。
「う…、分かったよ。
帰りも一緒ね?絶対に誰かに着いて行ったらダメだからね?」
いつも言われているので、僕は「はいはい」とテキトーに返した。
僕が太陽との約束を破るわけがない。
教室に入り、いつも座ってる場所に腰を下ろす。
そのうち遊馬も来るだろう。
鞄から荷物を出していると、「統和ちゃん、おはよ。久々だね」と秦野くんに声を掛けられる。
「秦野くん、久しぶり」と笑いかける。
太陽と会って以来、秦野くんと仲良しの2人は僕に近づかなくなった。
少し寂しい気もする…
「ん?なんか統和ちゃん、さらに可愛くなった?」
そう訊かれて、僕は「えっ!?何も変えてないよ?」と首を振る。
それに、可愛くなどない。
「え、なんでだろう?」と秦野くんが首を傾げていると、遊馬が「おはよー」と僕の隣の席に座った。
「お、遊馬ちゃん。おはよ」
遊馬と秦野くんはノリが合うのか、僕無しでもたまに話している時がある。
「はい、これ。休んでた時の分」と差し出された資料を受け取り、「ありがとう」と言うと、遊馬が首を傾げる。
「ん?なんか統和、雰囲気変わった?」
「え?遊馬も?なんでそんなこと訊くの?
何も変えてないよ」
それとも、僕の知らぬ間に何か変わったんだろうか…?
少し考えていた遊馬が「あ!」と声を上げた。
僕も秦野くんも「え、なに!?」と訊く。
「さては…、統和ったら、処女卒業したなぁ?」
ニヤニヤと遊馬が言う。図星だ…
「なっ、しょっ…、もう!
人前でそんな話やめてよ!!」
と僕が真っ赤になって怒ると、遊馬は「もう~、可愛いんだから~」とさらにニヤつく。
一方で秦野くんは、僕の手を握って目線を合わせると
「俺、結構本気で統和ちゃんのこと、好きだよ」
と言った。
「え、えっと、ありがとう?」
僕が首を傾げると、秦野くんは溜息を吐いた。
「やっぱだめかぁ…」とがっくりと肩を落としている。
「最初から付け入る隙なんてなかったじゃん」と遊馬がケラケラ笑う。
「もし、園田と別れたらいつでも俺のとこに来て良いからね」
と秦野くんが僕の手を握ったまま言う。
気持ちは嬉しいけど、太陽と別れることは考えたくない。
「はいはい、うちはお触り禁止でーす。
早く手を離さないと園田くんにチクるからね」
と、統和が秦野くんの手を手刀で切り落とした。
チャイムが鳴り、「いつまでも!待ってる!!」と言いながら離れていく秦野くんの後ろで教授が「早く席に着きなさい」と注意しながら入ってきた。
「統和、おめでとう」
遊馬が小さい声でそう言って、黒板の方に視線を移す。
「ありがとう」と僕も小さい声で返した。
僕は間違いなく、この上なく幸せなΩだ。
〈〈本編 了〉〉
もしかしたら、後日ASとか書くかもしれません。
お読みいただきありがとうございました🌸
ともだちにシェアしよう!

