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目をゆっくりと開ける。
けれどもまだ眠く、ぼーっと天井を見上げていた。
しばらくそうしているうちにうとうとし始めていた。
また寝ようかな、と思っていた時、すぐそばからくすくすと小さく笑っている声が聞こえた。
顔を向けると、そこには大好きなままが楽しげに笑っていた。
かわいい。
目が合った時、一瞬ハッとしたような顔をした後、目尻を下げた。
「大河、おはよう」
目が合えば向けてくる大好きな顔に、真似してそれらしい顔をした。
するとままは、ふふっと笑って、頭を撫でてくれた。
大好きなままの優しい手。
暖かくて心地よくて、その温もりから「大好きだよ」って伝わってきて、その大好きな手でずっと撫でてもらいたくて、「ま、ま⋯⋯」と声を掛けた。
まだちゃんと言えない言葉。そんなことに腹が立つけれど、ままは返事してくれた。
「ん? どうしたの?」
「⋯ま⋯っ、ま⋯⋯」
「うん」
「もっ⋯⋯と⋯⋯」
「もっと⋯⋯? ⋯撫でて欲しいの?」
伝わった。
喜びのあまりうんうんと力強く頷いた。
「ふふ。甘えたさんだね」
愛おしいというように笑みを深める。
応えるように、さっきよりもゆっくりと丁寧に撫でてくれる。
やさしい。だいすき。
さっきよりも感じる優しい温もりにまたうとうとしてきた。
ゆっくりとまぶたが下がる。
「また眠くなっちゃった? 起きるまでまだ時間があるから、寝てていいよ」
声を小さくして言った。
まだままの顔をみていたい。まだままの声を聞いていたい。けれど、眠たい。
目を細めて愛らしいと眺めるままの顔がぼんやりとしていく最中、歌が聞こえた。
小さな声量で歌うそれはあまり上手くないけどと言ったけれども、自分のために歌ってくれるままの歌声は大好きだった。
もっときいていたい。
けど、その気持ちよりもまぶたが閉じていた。
「⋯⋯おやすみ、大河」
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