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第149話 母の真相
「綺麗な娘がいるよ。日本人だ。」
花田美鈴は、幼い頃から目を付けられていた。
近所のC国人の夫婦。鈴木夫妻。日本に帰化して通名を名乗っていた。
「誰でもいいから日本人の子供を故国に送れ、って言われてもなあ。」
日本に来たらしばらくおとなしく暮らして帰化して日本人になれ、と言われている。
「国家動員法が発令されたら、取るものもとりあえず故国の言う事を聞かねばならないからな。」
ほとんど近所付き合いはしない。主人は土木作業員。妻は介護施設で働いていた。その頃で、日本に来てから十年以上になっていた。誰もが日本人だと思っていた。
たまに見かけない男が訪ねて来ていた。
それがある日,夫妻ともパタっといなくなった。
誰にも挨拶無しでどこかに消えたようだった。
美鈴がいなくなったのと同じ頃。時を同じくして近隣の村でも行方不明になる子供が増えた。
その夫婦と関連付けて考えるものはいなかった。今思えばおかしいと気づくはずだ。
そんな事が頻繁に起きる時代だったかもしれない。
花田家の場合少し珍しいケース。いなくなった娘が十年くらいして帰って来た。妊娠していて、子供を生んだ。そしてまた、消えた。
それでも子は育つ。娘は馨と名付けて行った。
ずっと孤独な子供だった。サッカーだけが友達だった。祖母が不憫がって可愛がったから、寂しい子供では無かったと思いたい。
そんな人間が意外に多く国に溶け込んで暮らしている。侵略するための拉致だったのか、故国の意図はわからない。
ある壮大な計画(侵略)が途中で頓挫しているのか、今も周到に続けられているのか?
時間と共に紛れてしまうものだろうか?
誰も真実はわからない。
いきなり母親の葬儀をする事になった馨は、身辺を調べてみた。
生きている親戚や近所の人も真相を知るはずも無く、無戸籍児にならずに済んだのは、祖父母と叔父叔母のおかげだった。
中学に入った頃、初めて出生のいきさつを知った。会った事もない母親に懐かしさを感じるはずも無く、実父母だと思っていた人が違っただけだった。親たちはその話の後も、変わらず愛情深く接してくれた。感謝の気持ちがある。
しかし母親があの花田美鈴だと言う事は知らない方がいいだろう。
稀代のサイコパスだった。それも後付けで洗脳された故、なのだろうか。多くの人間を死に追い詰めた女。調べるほどに戦慄する。
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