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第11章 まどろみの果て -4-(最終話)

 黒雲の隙間、結界越しに、暁の空が見える。  雲は徐々に散っていき、紫がかった光が、朝の訪れを静かに告げようとしていた。  レンは、その場に座り込んでいた。  美しかった庭園も、巨大な水晶の塔も、そこに守られていた魔法陣まで破壊し尽くされた中で、なぜか彼らのいる場所だけが綺麗に保たれている。  レンは、鼻を啜ると、両目から流れる涙を袖で拭った。  そうしてから、自分の意思で手を握りしめる。ほどなくして開いた手のひらを、しばらく眺めた。  エメルの意識は感じない。  消えてしまったのか、また奥底で眠っているのか。  レンは、視界の端に漂うスピカに「さっき見えたのは――」と言いかけ、やめた。  あれが、本当にアヴェン自身が語ったことなのか、スピカが見せた都合の良い夢だったのか、それはわからない。  知っているのは、アヴェンとエメルだけ。それでいいと思った。  レンは立ち上がり、空を見上げた。  今この時になっても、やはり自分には魔力も稀人の力もないようだ。エメルが張った結界は、もしかしたらもうすぐ消えてしまうかもしれない。  リュイが隣に並び、レンを見つめた。  それだけで、不思議と、不安も恐怖も消えていく気がした。  スピカが、二人の間を踊るように漂い、消えた。 「なあ、あの精霊、「お前はやっぱり気に食わないからわざと痛くしてやった」とか言っていたが……」  そう言いながら消えかかった紋様をさするリュイを見て、レンは少し笑った。  遠くから、ラティたちの声が聞こえてくる。 「説明が大変そうだ」  そう言ったリュイに、レンは思いついたようにぱっと顔を輝かせた。 「ひとりひとりに言うのも大変だからさ、いっそ一冊の本にまとめて――」 「愛している、レン」  突然の告白に、レンは一瞬固まった。 「あ……のさあっ」  顔が熱くなるのを自覚しながら、レンはリュイに詰め寄った。 「それ、俺が先に言おうと思ってたやつだからっ」  微笑んだリュイが顔を寄せ、レンの瞼に唇を落とした。 「だからこれも――」  レンは言いかけた言葉を止めた。  両手で、リュイの頬を包む。 「俺も愛しているよ、リュイ」  言葉とともに、唇を重ねる。  抱き合うふたりを、朝陽が優しく照らしていた。

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