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第1話 敵国の宰相の伽をさせられる

利他的で優しゅうて人思いの子で悪知恵の働かん子は生きていかれへんのや。 素直で一途で疑わない真っ直ぐな子には不幸がやってくる。 人々の邪心がその子にどっと吸い寄せられてその子死ぬで。 《──悪鬼は俺か》 ◇◇◇ 今年で21になる。俺が受け容れた相手は皆腹上死した。中が良すぎて天国を飛び越えて冥界へ旅立ったらしい。 2人連続で相手を腹上死させてからは俺はタチしかしない。 ネコは二度としないと禁止したはずなのに。 俺は敵国の宰相に囚われ幽閉されていた。 俺は祖国では名の知れた豪族の家の養子だった。 俺と引き換えに身代金を用意させてもらってしまおうという魂胆だったようだが、養父の豪族は俺のことを「知らない男」と両断して俺を敵国へ残した。 それからは幽閉を聞きつけた敵国の宰相がたびたびちょっかいをかけにやってくるようになった。 敵国の宰相は 「わたしはタチ専だからヤりたいならお前ネコになれ」 と云う。 この男になら抱かれてやっても……いや腹上死させるかもしれない。 敵国の宰相を殺せない。 「なら触れるだけ。お前を傍に置かせてくれ」 と云う。 ずるい。そんなの生殺し。バニラだけってさつまらないよな。なんかほんと傍仕えさせられて愛され始めたけど最愛の人を腹上死させないために俺はネコを被る。 俺は絶対にネコにならない。 宰相を受け入れないために。 少しずつ知らない表情や声色を知ると途端に甘やかしてしまいそうになる。 宰相はガタイもでかいくせに一人で寝れないらしい。 だから俺は毎晩伽をさせられる。 伽といっても中へは決して入れさせない。 触れ合うだけ。 唇を突き合わせるだけの、バニラ。

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