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第2話 受けたことのない愛情は飢えた自分には痛いくらい美しかった
優しくされるとたまらなくて故郷への悲しみとかよりも、親父に作られた痣や古傷に口付けを落としてくれる宰相のことが好きになってしまった。
敵国の宰相なのに。
決して愛してはいけない人なのに。
俺はもうこの人以外いらないと、そう思った。
俺の国と敵国の宰相が戦うことになった。
故郷への愛は薄れ今はただ敵国の宰相へ捧げる愛だけを糧に生きていた。
バニラでもいい微かな触れ合いだけでもいい。
俺はもう自分から逃げない。
自分から立ち向かわなきゃ。
好きなものは手放しちゃいけない。
手放したらもう元に戻ってこない。
戦は敵国が勝利した。
宰相は傷を負っていたから俺がつきっきり寝ずに看病した。
敵国の宰相は看病に必死な俺をくすくすと喉で笑って頬笑みを浮かべるだけだった。
「なんで笑ってんだよ」
と聞けば
「わたしのために尽くしているのが面白い」
と笑う。
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