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第1話 君の隣にいれたことが僕の幸せでした
この恋を氷砂糖みたいに溶ける前に自分だけの宝石箱に隠しておきたい。
君が微笑みかけてくれることが僕のすべてだった。
初めて会ったとき、君はまだ僕より背が低くて、親しゃぶりの癖も抜けてなくて、自然教室で一緒の部屋で寝る時に見えちゃった。親しゃぶりしないと寝れない子。
それが君だった。
ひとつ、ふたつと歳を重ねて同じ季節を過ごしてきたはずなのにいつしか君はもう僕の背をゆうに超えて、上から見下ろすようになったね。
同じ小学校、中学校、高校へ通ったね。
全部、頭のいい君といっしょにいたいっていう僕のわがままで猛勉強して君と同じ高校へ入学したんだよ。たぶん、知らないよね。
体育の休憩時間に水分補給してる僕の頭の上に顎をのせて得意げな表情を浮かべてる時も。
無理やり連れてかれたゲームセンターのプリクラで勝手にらくがきしてくるくせに、自分が盛れてないからってかわいい犬のスタンプで歪んだ頬っぺたを隠しちゃうところも。
ぜんぶぜんぶ君らしくて、近い距離にいるのにね。もうこんなに遠く感じるのはなんでなんだろうね。
7歳の時に僕に約束してくれたよね。
「大人になったらけっこんしてね。やくそく」
最初は恥ずかしかったし驚いたし、結婚なんてありえないって思ったけど、歳を重ねたらそれがどれくらい難易度の高いクエストなのかわかるようになったよ。だから、もういいんだ。
君はいつしか女の子からモテるようになって、クラスの人気者。学校の有名人。平凡な特にこれといって特技のない僕とは生きる世界が違ったよね。
僕が君の隣でずっと笑ってる場面が頭に浮かんでは消える。全部、幻、だったのかな。僕の夢見がち?
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