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第2話 今日から君は誰かの旦那さん

だからね、思うんだ。  今日から君は誰かの旦那さんになるんだね。 「結婚おめでとう」  そう言って君に渡した花束を、君は奥さんに誇らしげに見せたね。 「こいつ、幼馴染。センスいいよな」  ってあの頃と同じ眩しい笑顔で君が言うから、ウェディングドレスを着た奥さんも心底嬉しそうに笑うんだ。美男美女でお似合いの夫婦だよねって、みんなが言う。  君は僕以外の人と結婚するんだね。  幸せになってほしいよ。  でも、ちょっとさみしいな。  僕が与えることのできない幸せを、奥さんは君に与えられるんだろう。  僕には何が足りなかったのかな。  愛情? 信頼? 波長?  もうずっと、この日が来るのが怖くてたまらなかった。ずっとずっといっしょにいたのに。手の触れる距離にいたのに。  なんでこんなに胸が苦しいんだろう。  好きだったよ。初めてだったよ。こんな気持ち。  僕は君との思い出の全部を自分だけの秘密にするから。  氷砂糖みたいに、甘い思い出で満たすから。  いつか、いつの日か。また会うことがあれば。  その時は、僕だけはその氷砂糖をコーヒーに入れさせて。  君の進む道の先に僕はいないけど、僕だけは君との思い出に浸っていたいんだ。愛してたよ。  さようなら。僕の初恋。  結婚式から帰る帰り道、暗がりの中をひとりで歩いている。  僕のワイシャツの袖が濡れてる。  電柱の下にいた野良猫が僕を見て、ぎょっとしてしっぽを立てて忍者みたいに逃げていった。  夜空に舞い初めた白い雪が僕の嗚咽を白く残していく。  大好きだよ。初めて会ったときからずっと、君は僕の運命の人なんだと思ってた。  しんしん降る雪の中、家路を急ぐ。  愛してた。  愛してたんだよ。  生まれ変わったらその時は君のお嫁さんになれますように。  僕はそんな祈りを込めて雪の降る空を見上げていた。 家に帰った。  スーツを脱いでハンガーに掛けた時、本当に終わってしまったんだと膝から床に崩れ落ちた。  鏡を見たら乾いた涙の跡がほんのりと頬に残っている。  祝ったはずなのにどうしてこんなことを考えてしまうんだろう、と思いながら。  自分の抗えない欲を心の底から軽蔑しながら。  それでも眠りにつく時、自分の身体を抱きしめると君のことしか頭に浮かばなかった。  25歳の冬だった。 Fin

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