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第2話 仲直りえっち①※
そしてその日の夜になっちゃった……。
夫と俺は別々でお風呂と歯磨き、スキンケアを済ませて後はお布団に入るだけ。
なんかもう心臓がばくばくして口から飛び出しそうなくらい緊張してしまって、無駄に特別な夜にしかやらない顔のスペシャルパックなんかをして俺は時間稼ぎをしている。
そんな俺を寝室のダブルベッドに腰掛けて愛読書のバイク雑誌を読んでる夫は、そんなに気にしてなさそうでちょっと安心した。
30分近く粘ってパックを付けていたら、いつのまにか水分が飛んでパックがぱりぱりになっていた。冬の乾燥って部屋の中でも容赦ない。そろそろ加湿器出さなきゃと頭の中にメモする。
おずおずパックを剥がしてから、丁寧に乳液で蓋をしていく。
なんで今日こんなに女子力高いんだ俺。
心当たりがあるとしたらひとつだけ。
今日の昼にレスのことで夫と話し合って、痛いとこ突かれてあわあわしてたら
「今日からはお前が誘ってね」
って言われてしまったから。
もう時計を見たら23時だし、明日はお互い仕事は休みだし。正常に考えれば致しやすい時間帯だ。
俺はいつも着ているもこもこのアイボリーのルームウェアを着込んでいたが、首元のボタンを2つだけ開けておく。
露出は大事だよな。まずは小さい面積から肌を見せて夫をその気にさせてやる。
レス解消作戦の決行だ!
俺はベッドに腰掛けると、雑誌を読み込んでいる夫の手のひらにそっと自分の手を重ねた。
「んー?」
夫は俺の気持ちをわかっているはずなのに受け流そうとする。
全肯定お兄さんになるんじゃなかったのか?
まだまだ……これから!
俺は気合と勇気を振り絞って、夫の腕に自分の腕を絡める。
頑張って上目遣いで夫の目を見つめて言う。震えて、か細い声しか出ない。
「……ねえ。こっち見て」
「ん?」
夫はようやく雑誌を閉じてベッド隣のチェストの上に置いてくれた。
よし。目はちゃんと俺を見てるな。
もじもじと足先を擦り合わせながら、俺は夫の腕をぎゅっと抱きしめた。
「こ、こ、こ、今夜は俺が……誘、うからっ」
「うん」
俺の頬っぺた絶対真っ赤だ。赤面している自分を簡単に想像できて、体がふつふつと沸き立つ。
全肯定夫は少し満足げに微笑み返してくれた。
「今日は俺のことめちゃくちゃにしてください」
「……」
覚悟を決めて言った。
実はまだ一度も言ったことのないセリフだった。
あれ? 夫が固まってしまった。返事もない。
まずい、地雷を踏んだか?
とおろおろと目線を左右に動かしていると、不意に視点が反転した。目線の先には白い天井が見えた。
夫が俺の身体を組み敷き、慣れた手つきでリモコンで部屋のライトを薄暗くした。
は、はじまる……!
俺はどくんどくんと高鳴る心臓の音が夫にも聞こえてしまうんじゃないかって心配になって息を止めた。
「ほんとさあ、無意識に煽るのやめてくれる?」
「え?」
態度が豹変した夫を見て
あー、やらかしたわ俺。
そう冷静に受け止めた。
夫は獣のような瞳を浮かべると俺のルームウェアを胸元まで捲り上げて、ちゅと鎖骨にキスを落とした。
ちゅ、ちゅ
と幾度も触れるだけのキスの雨に、俺の身体の奥からじんわりと熱が浮かび上がってくる。
「かわいい。世界一かわいい」
丁寧に愛撫をしてくれるのは嬉しいし有難いが、今度は俺がお楽しみをお預けされている感じで耐えられなかった。
「ん……くすぐったいから……もう、はやくシて」
ぴく、と胸に吸い付いていた夫の耳が微かに動く。そのまま数秒その姿勢のまま俺の顔を見上げた。
その時の夫の顔、今まで見てきた表情の中で過去一かわいいの。
「かわいい……」
うりうり、と俺が調子に乗って夫の頬を撫でているとその手を掴まれシーツに縫いつけられた。
あ。やば、夫のスイッチ入れちゃったかも。
「煽るの上手くなったね。どこでそんなセリフ覚えてきたんだろうね?」
にこにこ口元は笑ってるけど、細めた目は全然笑ってない。夫が自身のスウェットを脱いで俺に覆いかぶさってくる。
優しいキス、甘い唇、柔らかな舌先。
その全てが夫が俺を愛してる証みたいな気がして嬉しくてたまんなくて、泣きそうで、もう一生一緒にいてくれないと俺は生きていけないんじゃないかって思った。
「愛してる。今日はお前が泣いてもやめない。覚悟しようね」
夫の煽るような表情に吸い込まれるように俺もこくんと頷き返した。
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