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第20話 Bチームとの話し合い(フード・ドリンクについて)

 翌日、放課後の教室にて九重くんを筆頭にBチームとカフェメニューの値段、提供するフード、ドリンクの詳細についての案を出し合うことになった。僕は書記としてスマホにメモをとっている。 「やっぱコンカフェといえば演出ありのフードだよね。昨日家でイメージフードを作ってみたから、みんなに写真見て欲しい!」 「すげえやモモちゃん。さっすが料理研究同好会の部長だ」  九重くんの感心したような声に、モモちゃんと呼ばれた|高島桃花《たかしまももか》さんはにこっと目を細めた。Bチームの頼もしいリーダーだ。  白百合が咲き誇るような笑顔にその場にいた男子生徒の視線が一気に集まる。  僕はメモをとるのに必死で何もわかっていなかったが、僕の知る限り高島さんはクラスの中でもモテる女子で西園寺さんとは真逆の雰囲気だと言われている。  黒髪のさらさらのロングが印象的な、クラスでも有名な清楚系だ。 「へえ。こうやってチキンライスに卵載せてオムライスにしてケチャップでキャストがお絵描きする演出か。いいじゃんこれ」  九重くんが褒めれば高島さんは「ふふん」と得意げにピースをした。 「それとあくまでもこれは文化祭におけるコンカフェだから、食中毒などの危険をなくすためにフードは全メニューレンジでチンする冷凍食品を用意して少し手間を加えるのがいいと思うの。楽しい文化祭で万が一誰かがお腹痛くなったら悲しいし」  料理研究同好会の部長である高島さんの意見はもっともで、その場にいた全員が相槌を打っていた。 「じゃあフードメニューはレンチンのものを用意して、小型の冷凍庫と冷蔵庫もレンタルする予定で予算組もう。ドリンクはどうする? 200ミリリットルの紙パックのジュースとか缶ものでコーラとかどうかなって思ってんだけど」  僕は音速に勝る勢いでスマホをタップしてメモを取っていく。  クラスのみんながやる気満々でアイディアも湯水のように湧き出ている。そのひとつひとつのワードでさえも聞き漏らしたくない。  必死に耳をそばだててスマホに文字を打ち込む僕を見て周りのクラスメイトから「守須頑張ってんなあ」と感心されていることに気付かずにひたすらスマホの画面をタップしまくっていた。 「いいと思う! ドリンクは紙パックと缶ものにして一律200円でどうかな? キンキンに冷えたつめたーい飲み物なら200円でも悪くない値段だと思う。一応利益出すことも考えるとね」 「おっけー。了解。じゃあフードとドリンクに関しては細かいことはBチームに任せる。特に小型の冷凍庫と冷蔵庫のレンタルとフードやドリンクの仕入れの会計間違えないように頼む。予算内で進めよう。じゃあ後頼むぞ」  九重くんのリーダーシップにみんなが納得して拍手が沸き起こる。  隣に控えていた僕もなんだか一緒に応援されているようで気持ちがよかった。  九重くんと一緒にBチームの島と反対側にいるAチームの島に近づいた。  僕はクラス内で玲乃の近くに行くことに慣れておらずついよそよそしい雰囲気を出してしまいそうになる。勇気を出して1歩前に足を踏み出した。 「キャストのみんなー! メイクとか衣装どんな感じ?」  元気な声の九重くんにAチームの皆が注目する。女装する男子生徒にメイクの練習をしていた西園寺さんがくるりと振り返る。 「玲乃の素材が良すぎて絶好調でーす」  にんまり満足気な様子の西園寺さんに九重くんは「さすが玲乃!」と調子を合わせる。 「おー。いいやん。背が超高い女にしか見えねえ。後でちゃんと下半身男かどうか確認しねえとだわ。なあ守須?」 「……」  少し下ネタを含む会話に不意に巻き込まれて僕は何も言えず、ただ女装した玲乃の顔をぽーっと見つめていることしかできなかった。  髪の襟足が肩につくくらい長いのもあってかもともと中性的だった顔が今はほんとの女の子にしか見えない。  白髪はセンターパートで柔らかくくびれており、ふんわりとした眉は美人である要素を完全に満たしている。  ふっくらとした唇は桃色のティントを塗られてぷるぷるつやつやで、もとから長い睫毛には束感のあるマスカラを塗られて上を向き瞳がぱっちりとしている。頬と鼻の先、顎にほんのり桃色のチークを入れられていて西洋人形のような美しさがある。  あまりにも無言で見つめすぎていたせいか、九重くんがぽん、と僕の肩を組んできた。 「玲乃ちゃんが可愛すぎて言葉も出ねえってか!」  九重くんに笑い飛ばされる僕をよそに目の前にいる玲乃はむすっとした目線を送ってきた。  あ、これ怒っているかも……。  不機嫌そうに寄せられた眉に僕は愛想笑いをして玲乃の視界からフェードアウトしようと試みる。  会話の中心は西園寺さんらしく、九重くんもそれに乗っかるように褒めまくっている。  すると、褒め尽くされた西園寺さんがにこにこご機嫌な笑みを浮かべて声高らかに両腕を広げる。 「まあ、ウルトラスーパーギャルJKことこの私、西園寺様にかかれば女装メイクでそこらの男を感動のあまり声を出せなくさせることも可能ですわよ」  ぱちぱちぱち、と周りのみんなが拍手する中、玲乃だけが僕をじっと見て目を離さない。  まるで獲物を横取りされたみたいな目線に、僕は思わず顔を背けていた。 「女装メイクに関しては西園寺に任せていいだろう。あとは女性の皆様、男装のほうはどうなってる?」  九重くんの問いかけに西園寺さんがはーいと大きく声を上げて挙手する。 「男装のみんなー! 入っておいでー」  西園寺さんの言葉に従うように3人の女子生徒が教室に入ってきた。反対側の島で話し合いをしていたBチームからキャーという黄色い悲鳴が飛び交っている。 「超絶イケメンくんたちのお披露目でーす」  西園寺さんが男装した女子生徒3人の肩を組み誇らしげに笑う。みんな普段の女の子らしい可愛いメイクとは異なり、中性的なイケメンの顔つきに変わっていた。 「いい! めっちゃ美男子くんだ」  九重くんがスマホを片手にぱしゃぱしゃと写真を撮ると、男装した女子生徒たちは思い思いにポーズを撮ってさらに男性らしく振る舞い始める。

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