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第22話 甘えたくんの嫉妬① 他のやつに触らせたくない

 学校を出てからは2人とも無言だった。  玲乃が僕の歩くペースに合わせてくれたせいで、家に着くまで30分かかってしまった。僕は小学生の頃からあまり歩くのが速くなくて、よく他の同級生にいじられたことを思い出していた。  でも、そういう時に玲乃がいつも僕を助けてくれたなあ。  あまりにもしつこく歩く速さをいじってくる同級生を、玲乃は返り討ちにしたのだ。  公園で皆で水風船を作って遊んだ時に、玲乃はその同級生を狙って水風船を次々投げていた。顔も服もびしょびしょに濡れた同級生は家でお母さんにこっぴどく怒られたそうだ。  翌日には頭に大きなたんこぶを作って登校してきて、僕に謝ってきたのだ。  もちろん僕の後ろには玲乃が腕を組んで控えていてそれが怖くて謝ってきたんだろうけど。  そんなほっこりするエピソードを思い出してから、制服の上からそっと背中に手を伸ばした。 「……っ」  触れたところから鈍い痛みがじいんと全身に響く。  背中の怪我は治りつつあるものの、まだいつものペースで歩くのはしんどかった。それでも、以前よりはましな痛みに落ち着いてきた。  エレベーターに乗り込み自分の部屋へ向かう。すると玲乃が突然マンションの共有部の廊下で僕の手首を掴んできた。 「ちょっと話あるから、このまま俺んち来て」  その瞳は冗談の色が一切なくて僕もそれに応えるように真剣な表情で頷き、玲乃の部屋へと入っていった。  クーラーの効いた玲乃の部屋で涼んでいると、玲乃が缶のオレンジジュースを2つ持ってきて1つを手渡してくれた。ひんやりとする容器を左頬にあてて火照りを押さえていると玲乃がすぐ隣に腰掛けてきた。  急に距離が縮まったことで心音が激しくなるのを感じて目を伏せた。  その間、玲乃は何も言わないまま僕の髪の毛をくしゃりといつものように撫で始めた。 「前髪重いね。暑いしそろそろ美容院行ったほうがいいかも」  無表情の玲乃に見入られるとまるでメドューサと目が合ったみたいに固まってしまう。  ルネサンス期の彫刻みたいに整った顔で見つめられると、思わず息を止めてしまう。 「んー。行こうと思ってるんだけど美容院詳しくなくて……」  本音だった。普段は1000円カットのお店に行く程度で、美容院は敷居が高いと感じて行くことは少ない。 「じゃあ俺が行きつけの美容院連れてくから。今週の土曜の昼過ぎ空いてる?」 「うん。いいの?」  僕の問いかけに玲乃は真顔のままだった表情を少し緩めて 「いいよ。睦のこともっと可愛くさせる」 「可愛くって……僕はかっこよくのほうが有難いな……」  玲乃がくくく、と喉を鳴らして微笑む。猫が日向ぼっこしてて目を細めているような表情に僕もほっとした。 「それよりも。九重と睦、仲良かったっけ?」  話が突如方向転換した。 「たまに挨拶するくらいの仲だよ。今は文化祭準備で同じDチームだから話すことは増えたけど……。なんで?」  きょとんとした表情を浮かべる僕を見つめたまま、玲乃が人差し指でおでこをつんと押してきた。 「あいつと距離近いなって。ていうかあいつが睦の身体触りすぎ。見てて不快」 「あ……ごめん。なんか九重くんって距離感近いから断れなくて……」  困ったように眉を寄せると玲乃が腕をまわしてきた。  玲乃の制服のネクタイが首筋に擦れてくすぐったくて身を捩ると、すぐ目の前に玲乃の唇が見えた。慌てて顔を下げる。

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