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第28話 チェキ撮影のお手伝い

 午後の時間は再び九重くんと僕が廊下で列の整備をしていた。  Dチームの女子生徒2人は午後に美術部員として出し物の発表があるのだというので交代したのだ。  午後になっても長蛇の列は尽きることなく隣のクラスにまで列が伸びてしまった。隣のクラスは人の入りが落ち着いて閑古鳥が鳴いている様子だ。  教室の入口でお客さんに案内をしていると、大きなうちわを持った女性2人組が目の前にやってきた。  僕はそのうちわをごくんと唾を飲み込んで見入る。うちわの片側には『玲乃投げキッスして!』とピンク色のもこもこした文字で縁取られており、裏面には玲乃の顔が印刷されたホログラム仕様の写真が貼られてあった。  2人とも髪の毛をハーフアップにしてゆる巻にしている。目の下にはきらきらしたハートストーンが付けられていてまるでアイドルのような見た目だ。  僕は心の中がざわざわと渦巻いて息が苦しくなりかけたが、これも仕事と割り切って2人を店内へ案内した。  九重くんに人手不足のためチェキ撮影の担当に加わるように言われた僕は、教室内に足を踏み入れた。  教室の出口側に設けられたSNSフォトブースでは『みゃうみゃうカフェ』のネオンの文字が浮かび上がり、その周りを白い薔薇や雲が囲んでいる。それを背景にして写真撮影ができるスポットだ。僕は予め練習していた通りにチェキをセットしてお客さんとキャストを撮影する。 「西園寺さまー!」  キャーキャーと黄色い声が教室を吹き抜ける。  男装した西園寺さんの人気はうなぎ登りで、ツーショットチェキに並ぶ女性のお客さんが後を絶たない。西園寺さんは写真を撮られることに慣れているようで、1枚1枚丁寧に対応をしている。  みゃうみゃうカフェでは好みのキャストとのツーショットチェキが1枚300円で撮影可能だ。一人につき上限10枚まで撮影ができるシステムだ。   キャストの中で1番人気なのは飛び抜けて玲乃だった。西園寺さんと交代でフォトブースを入れ替わりながら今度は玲乃の撮影に入る。  僕はチェキを撮ることに夢中で気づかなかった。先程、入口で案内した2人の女性のお客さんがそれぞれ玲乃とツーショットを撮ろうとしていることに。 「玲乃ー! SNS見たら2年A組の玲乃って何者? ってみんな噂してたよ」  デコレーションされたうちわを持った女性が玲乃の隣に近づく。話をしたそうにうずうずしている様子に気がついた玲乃は静かに言葉を残した。 「俺も話したいけどごめんね。お客さんたくさんいるからまた今度話そうね」  玲乃のやんわりとした断り方が気に食わなかったのか女性がわあわあと喚き出す。 「えー。せっかく来たのに塩対応じゃん。SNSに呟いちゃうよー」  半ば脅しのような言葉を呟くと、女性は玲乃の腕に自身の腕を絡めて胸を押し付けた。玲乃の眉がつり眉になるのを見越した僕が女性と玲乃の間に割って入る。自分でも驚いた。こんなふうに玲乃を助けようと無意識に踏み出した一歩があまりにも積極的だったことに。

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