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第38話 皆から褒め尽くされて照れる睦
「いえ……僕ひとりの手柄というわけではなくて、メイクや衣装のサポートをしてくれた西園寺さんたちのおかげです」
率直に自分の気持ちを伝えると葉月先生は穏やかな笑みを頬にたたえた。こういう風に優しく笑うこともある先生なんだとその時知って不思議な気持ちになった。
「そういう謙虚なところがみんなを引き寄せるのかもな」
「え?」
思ってもみなかった言葉に僕は首を傾げる。
「九重がな、俺に言ってきたんだよ。今回のクラスのMVPはお前だとさ。クラスのみんなで話し合った結果らしいぞ。主濱と西園寺も候補に上がってたみたいだが守須の頑張りを皆見ていたらしい。九重について回って各チームの進捗状況を把握してグループチャットで共有したり、文化祭当日は廊下でお客さんの列整備をしていたそうじゃないか。クラスが替わって間もないが文化祭を通して普段は大人しくて引っ込み思案の守須の一生懸命な姿を見て心動かされたんだと」
葉月先生は焼肉を大盛りの麦ご飯に載せて一口で頬張る。
「……そんなふうに思われてたんですね」
僕は少し恥ずかしいような、嬉しいような、クラスのみんなに対して感謝の気持ちが倍増した。
照れ隠しのために俯き加減でわかめスープを飲む。ほっと身体の内側から温まるような心地良さにこれが幸せなんだろうなとひとり思い耽っていた。
そんな時だった。店の入口のベルが鳴り響き、カツカツとブーツの音を鳴らして僕のもとへ見慣れた姿が近づいてきた。九重くんが席から立ち上がりみんなに聞こえるように咳払いをする。
「えー。みなさんお待ちかねのキング玲乃のご到着です。拍手でお迎えください」
途端にみんなの視線が玲乃へと注がれる。直後、鳴り止まないほどの歓声と拍手が店内に響き渡った。
「いや、他のお客さんもいるから。静かにしてくれない? キングとか超恥ずかしいんだけど」
顔は笑っているものの目は据わっている玲乃を見てみんなが「ごめんねー」と笑って謝る。
「玲乃ー。うちらの席空いてるよ」
スマホを片手に西園寺さんが手をひらひらと振るのが見えた。僕はてっきり玲乃はそちらの席へと向かうのだと思っていたが
「いや。仕事で疲れたからこっちに座る」
と言って僕と葉月先生のテーブルの席へ腰掛けてきたのだ。
「睦。奥行ける?」
「あ、うん。荷物こっち置こうか?」
「ああ。ありがと」
玲乃と僕のやりとりに葉月先生は意外そうな顔をした。
「珍しいな。お前ら2人の組み合わせは」
僕はぴく、とその言葉に反応する。確かに普段の学校生活では僕が玲乃とラフに話しているところを見たことがある人はいない。僕は誤魔化すように言葉を洩らす。
「えっと。文化祭の準備とかで話す機会が多くて」
そう説明した瞬間、とん、とテーブルの下で玲乃の膝が僕の足にぴたりとくっついた。
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