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番外編3
鈴木陸・川口颯太。私は現在、このふたりのユニット『rivibell』のマネージャーを担当している。
2人が出会った当初の互いの印象はかなり悪かったと思う。特に真面目でアイドルに異常なほど執着をしている鈴木さんからすると、川口さんの態度や意欲は最悪に近いものだっただろう。鈴木さんには気苦労を負わせてしまった。マネージャーとしてそこはきちんと謝った。
鈴木さんは太陽だ。ただ必死にその場所で己を高めているだけなのに、その姿はあまりにも眩しく、そして熱い。
この熱は人を焼く。そして、距離が近くなればなるほどその熱は全身に燃え広がり、焼き尽くしてしまう。───原田さんのように。
原田さんは一度この太陽に近づき、同じ場所に立った。しかし、太陽の放つ熱には耐えきれず、燃え尽きてしまった。
原田さんは悪くない。マネージャーとして1歩引いた身としても鈴木さんの光は眩しく見えるのだ。より近く、親密だった原田さんが焼かれてしまうのも無理はない。
そして鈴木さんも悪くない。彼の光に周囲がどれだけ狂わされるのかを一向に自覚しない所は修正して欲しいものだが、彼は彼なりに生きているだけなのだ。誰かを支配しようとも、誰かに危害を加えようともしてない。彼の生き方を無理に変えようとするならば、太陽は輝きを失ってしまうだろう。それはいちマネージャーとして、そしていちファンとして避けたい。
原田さんとのユニット解散後、鈴木さんのアイドル以外の仕事に翳りが見えてきた。鈴木さんの常日頃から己を律し高めようとする姿は美しい。だが、やはり鈴木さんが1番強く光り輝くのは、アイドルとして歌い踊る時なのだ。
アイドルを再開して欲しい。誰かと共に。
鈴木さんは輝くと同時に陰も抱えている。
彼は危ういのだ。
己の抱く理想の高さと、元来の自己肯定感の低さが合わさり、彼を押し潰しそうになる。そしてこの不安を跳ね返そうと鈴木さんはより自分を追い込むようにレッスンをする。
このままではいつか崩れてしまう。
だから、誰かと共に、不安を受け止めてくれる相手と共にアイドルとして活躍して欲しい。
私のマネージャーとしてではなく、同じ立場で支えてくれる相手と。
原田さんのような人を出さないためにも鈴木さんに並び立てるような存在を探した。しかし選考はかなり難航し、かなり時間がかかってしまった。
そんな中現れたのが川口さんだった。川口さんが入所当時にふいに見せた負けず嫌いで強い芯を持つ一面を信じて良かった。最初こそ私もどうなるか不安もあったのだが、彼は鈴木さんという強大な光を近くで浴びても折れなかったどころか、あっという間に鈴木さんの不安を受け止め、支える存在ともなってくれた。
川口さんと出会った事で、鈴木さんはまた成長するだろう。しかし、川口さんなら共に歩みを進めることが出来る、そう信じている。
川口さんが鈴木さんに見せる感情が少し執着ぎみているのは気になるが、太陽をすぐ傍で見つめ続けることになるのだ。そのくらいでないとすぐに目が焼けてしまう。
そう納得し、今日も事務処理を進めていくのだった。
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