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大天使のお迎え 1
全くもって何が起きたのか理解できない。
寮までどうやって帰り着いたのか覚えていないし
ちゃんと寝たのかどうかも分からないまま気付いたら朝になっていたヴェネッタだった。
どうにか朝の支度を終え、授業に出ているものの
一生頭がぼーっとなってしまって何も考えられなくて。
ただ何度も何度もイヴィトの顔が思い浮かんで、好き、という言葉がずっと耳に残っているのだ。
好き。
とは、一体どういう事なのだろう。
触りたいとか近くにいたいとか、目に映ってたいとか。
なんでそんな事を思うのかまるで理解できないのに。
あの時とても冷静でいられない頭では、
そうなったらいいのに、だなんて思ってしまったのだ。
そして今も冷静でいられていないらしく、あり得ないと思うのに、
そうなったら、という気持ちが沸き起こってしまうのだった。
これは“異常”なのではないだろうか。
折角新しい眼鏡になって見えやすくなっているはずなのに、ぼーっとしすぎて頭をぶつけたり柱に激突したり
食事も全然喉を通らなくて、スプーンを持ったままぼけっとしていたり
これは異常以外の何物でもないと勘付いてしまってヴェネッタは恐ろしくなったりするのだった。
なので、イヴィト殿のことを考えるのは一旦やめるでござる!と息巻いたりするのだが
結局数秒後には思い出してしまったりして一生ループしている1日になってしまった。
どうにか1日を乗りこなして、あんまり食欲も無いので寮に帰ろうととぼとぼ歩いていると
後ろから誰かが駆け寄ってきた。
「ヴェネッタさん!」
着信音にしたいくらいの声に呼びかけられ、振り返ると
そこには、大天使と遜色ない麗しき青年がいて
ヴェネッタはぼーっとなったままその姿を見つめてしまった。
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