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大天使のお迎え 2
「ようやく見つけました。帰るところだったのですか?」
「……はぁ……」
「…ヴェネッタさん…?大丈夫ですか…?」
同じ制服なはずなのに、全然違う服みたいに見えるその存在は相も変わらず美しい。
彼は紫色の大きな瞳でヴェネッタを心配そうに覗き込んだ。
「レンシア様……」
ずっと遠くから見ていた瞳。
こんなに近くで見れるなんて貴重だなぁ。
などと呑気に考えていると、ヴェネッタの脳に張っていた謎のぼんやりフィルターが外れて
レンシアが目の前にいる、という状況が読み込まれると腰が抜けそうになりながら飛び退いてしまった。
「ひょぁぁぁ!?!れ、れ、レンシア様!!?!」
ヴェネッタはすかさず床にへばりついた。
「ご、ごき、ごきげ、ご機嫌麗しゅうレンシア様!!!邪魔でしたよね!!
すみません!!どうぞ自分の上をお通りください!!踏み潰していただいて!!」
「よかった…いつものヴェネッタさんだ…」
レンシアにこんなに近くに接近されても頭がぼうっとなってしまっていたのはやはり“異常”でしかないかもしれない。
「あなたを探していたのですよ」
「はぇ……?じ、自分を…?」
ヴェネッタが床に這いつくばったまま消えたくなっていると、レンシアはしゃがみ込んで苦笑している。
「何か怒られるんでしょうか…
た、確かに自分は今日一日ポンコツの木偶の坊でしたが……」
泣きそうになりながら怖々と顔を上げるとレンシアは、不思議そうに首を傾ける。
「…一緒に食堂まで来て欲しいのですが…何かご用事でもありましたか?」
「え!?いえいえ!何もございません!!
もちろん参らせていただきます!共に!!」
「ふふ。よかった」
くすくす微笑んでいるレンシアの肩の向こうからひょこりとドラゴンが顔を出して、黄色い目を細めてヴェネッタを睨んでいる。
そしてドラゴンは変な声で小さく鳴いた。
「違いますよ?ヴェネッタさんでしょ?イヴィトさんはさっきも会ったでしょう」
レンシアはドラゴンと何か会話をし始める。
イヴィトの名前が出てくるとヴェネッタはついびくっとしてしまう。
「うーん…ジンシーバさんは時々不思議な事を言うのですね…」
レンシアはドラゴンを抱え上げると、首を傾けている。
ドラゴンはあんまり意図が伝わらなかったのか足をバタバタしている。
「とりあえず、行きましょう。みんな待ってますから」
「…みんな……?」
ヴェネッタは言われるままに彼について行って食堂へと向かった。
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