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手紙 3
“私には幸せとは何か、よく分からなくなってしまった。
魔法使いとして皇帝に忠義を誓い、力を尽くし勲章を授かる名誉。
資産を築き、立派な城を建て、幾人もの使用人を雇い家の箔をつける事。
優秀な伴侶を得、良い結婚をし、良い子孫を残す事。
家が守り引き継がれる事。
そのどれもが幸せだと人は言うが、私には分からない。
何を以てして幸せと定義付けるのか、家の為とはなんなのか
今家督を引き継いだ君が決める事だ。”
“私はやがて長い長い眠りにつく。二度と目が覚めぬ眠りだ。
きっともう会う事のない私の子孫よ。
君にとっての幸せを考え、追い求め、後悔のないように生きなさい。
私のように、後悔のないように。”
手紙はそこで終わっていた。
ヴェネッタは自分が読むべき手紙だったのだろうかと思いながら、眼鏡を押し上げて涙を拭った。
父は果たしてこれの存在を知っていたのだろうか。
いや。きっと知らないだろう。知っていたらきっと…。
複雑に思いながらももう一枚紙が入っていて、ヴェネッタはそれに目を落とした。
「……え…?」
それは他の手紙とは違い、ちゃんとした印刷がなされている紙のようだった。
それは小切手のようで、そこに書かれている金額に目を見張ってしまう。
「い、い、いっせんま………!?!」
有効期限無期限の小切手に、ヴェネッタは思わず震えてしまうのだった。
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