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ねんねんころり

風呂から上がると、樹は俺の髪を丁寧に乾かし、歯も磨いてくれて至れり尽くせりだった。 ベッドに入ると、樹はぎゅうぅっと抱きついてきた。 「まーくん、眠い?」 「うん……でも、なんか足りない」 ――そう、いつものあれが 「ふふっ♡まーくん、甘えん坊さんだ♡じゃあ、やるね」 俺の腹辺りに樹は手を当てるとぽん、ぽん、と優しく一定のリズムでゆっくり叩く。 腹に柔らかい音が響く。 そのリズムに合わせるみたいに、呼吸がゆっくりになっていく。 ――あぁ、これだ。これがあると、安心できる。 上司の怒鳴り声なんて忘れてしまいそうだ。 心地よくてまぶたがどんどん下がってくる。 「まーくん、眠い?寝ていいんだよ?」 「………俺が寝るまでやってくれるか?」 「うん♡まーくん今日も頑張ったんだもん。まーくんが寝るまでぽんぽんしてあげるから、ねんねしていいよ?」 蕩けるような甘い声。 まるで赤ちゃんに戻ったかのような気分になる。 「……まーくん、俺ね?毎日まーくんが帰ってきてくれて本当に嬉しいんだ。パパは帰ってこない日とかもあって寂しかったの」 優しいリズムで叩きながら樹は少しトーンを落として言う。 「……俺の家だから帰るに決まってんだろ……まぁ、でもお前がいるから、帰れるんだと思う」 「……!ほんと?へへっ嬉しい♡」 樹の声がぱぁっと明るくなって、ぽんぽんのリズムが少しだけ速くなる。   ――あぁ、もうダメだ まぶたが完全に下がる。 意識がどんどん遠くに行く。 けど、とても気持ちいい。 「おやすみ、まーくん……いい夢見てね♡」 意識の奥で樹の甘い声が聞こえる。 ぽん、ぽん。 優しいリズムに身を預けながら、俺は思う。 ……やっぱり、こいついないと俺ダメだ 我ながら情けない結論だ。 けど、今はこれでいい。 そう考えたところで、眠りに落ちた。

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