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第26話 耳鼻科検査
翌朝、ようやく颯太の熱は下がった。
もう点滴はしていない。
「颯太、トイレまで歩ける?歩けるならカテーテルは外すよ」
少し首をかしげてから、うなずいた。
「じゃあ、外すからね」
布団をめくると、颯太はまた掛け布団を頭からかぶった。
本当に恥ずかしがり屋だ。可愛すぎる。
「ちょっと気持ち悪いよ」
そっと管を抜き、尿バッグごとバケツに入れた。
その後、先端と周囲を軽く消毒する。
「颯太、違和感はない?先端が熱いとか、しみるとか」
布団から目だけをのぞかせて、ううんと横に振る。
……そのかわいい目だけ見せるの、反則だよ。
片付けを終えた。
「じゃあ、トイレまで歩いてみようか?」
そっとベッドを降り、ゆっくり立ち上がる。
ドアノブや壁に手を添えながら、なんとかトイレまで歩けた。
う〜ん、本当は整形外科にあるような歩行器があると安心なんだよな。
後で借りてこよう。安定するまで必要だ。
日数がかかるようなら買ってもいい。
「颯太、今日は夕方から耳鼻科で検査だけど、大丈夫?無理なら明日にするよ」
少し考えている。
「そうだ、車で行って、病院に着いたら車いすで移動するよ。それならどう?」
ようやく頷いた。
やっぱり本調子じゃない。
それでも早く耳鼻科で検査してほしい。
結果がそろえば治療方針も決まる。
昼食後、4時まで寝かせておいた。
4時半に来てほしいと楓に言われている。
起こして洗面を済ませ、着替えを手伝った。
駐車場まで歩かせるのが心配だ。
「颯太、抱いて車まで行こうか?」
目を真ん丸にして首を横に振る。ぷっ。
「じゃあ、おんぶしていくよ。誰も見てないから」
これも拒否。……しょうがない。
「じゃあ、俺につかまって歩いて。いい?」
それは頷いた。よし。
颯太は両手で俺の腰にしがみつき、
抱き寄せるようにして駐車場まで歩いた。
大丈夫か……?
やっぱり早かったかなと後悔した。
病院に着くとすぐ車いすに乗せた。
これで安心だ。俺も白衣を着る。
耳鼻科に到着。
ナースが俺を見るとすぐ通してくれた。早い。
楓「よく来てくれたわ。具合はどうかな?」
颯太は少し首をひねる。
「じゃあ、これからいろいろ検査しますね」
最初に聴力検査、次に耳、鼻、最後に喉。
楓「ちょっと内視鏡で鼻から入れて調べますね」
ああ……かわいそう。
颯太はぎゅっと顔をしかめながら頑張っていた。
俺は片手を握って支えた。
モニターには内部の映像が映し出され、
次々と撮影ボタンを押していく。
しばらくして検査が終わった。
颯太はかなりつらかったようで、
終わった途端、もう寝込みそうな顔をしていた。
楓も気づいて俺を見る。俺は頷いた。
「そしたら、もう検査は終わりなので帰っていいですよ。
結果は今度お話ししますね。お疲れさまでした」
「楓、ありがとう。帰って寝かせるわ」
車いすに乗せ、早々に引き上げた。
実は車いすを借りてきた。
とても歩いて帰れる状態じゃない。
帰宅すると、
「トイレ行く?」
頷いた。
そのままトイレに連れて行き、
なんとか中に入れた。
しばらくして出てきたので、また車いすに乗せてベッドへ。
車いすはしばらく使いそうだ。困った。
寝室に戻るとすぐ水を飲ませ、横にさせた。
俺は洗面所で手を洗い、消毒して診察する。
血圧は92。
あ〜あ……倒れる寸前だ。
これでは食べられない。また点滴を開始した。
そこへ楓からメール。
「颯太君は眼振があるから、めまいの薬も飲ませてね」
俺は返信した。
「車いすを借りてきたけど、自宅用に買わないとダメだな。
行く前は伝い歩きがやっとだったけど、帰ったらもう無理。
またカテーテルだ。血圧92。危なくて歩かせられない」
すぐに“お手上げ”の絵文字が返ってきた。
病院の業者に車いすと歩行器、ポータブルトイレ、尿瓶、手すり、つい立てを注文した。
車いすは幅が狭く、折りたたんでも嵩張らないタイプ。
颯太は小柄で細いから十分だ。
届いたら病院から借りる形で自宅で使おう。院長権限だ。
でも理事である父には一言伝えておこう。
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