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第28話 カンファレンス

今日のカンファレンスは身内だけだ。 颯太のために、皆が本気で力を尽くしてくれている。 非公開の会議で、出席者は主治医である精神科の俺、内科医の父と弟、 そして耳鼻咽喉科の妹――この4人。 頼もしいメンバーだ。 ――カンファレンス開始―― 父「では、颯太君の検査結果をまとめて確認しよう。 陽一、まず全体像を説明してくれ」 陽一:総括(現状) 「はい。 颯太は現在、発熱・全身倦怠感・めまい・食欲低下・体重減少・失声が主症状です。 昨日の検査後は血圧が92まで低下し、歩行困難のため車いすを使用しています。 点滴で水分と電解質を補っており、寝たままの状態が多く、 留置カテーテルを使用することが多いです」 1・淳一:内科検査の結果 「まず内科的な検査から説明するね」 ●血液検査 • 貧血(軽度) • 白血球数:やや低め → 慢性的な疲労・栄養不良 • 肝機能:軽度上昇 → 過労・脱水・薬剤の影響 • 電解質:軽度の乱れ → 嘔吐・食事量低下 • 炎症反応:軽度上昇 → 身体ストレスが強い状態 「命に関わる異常はないけど、 長期の過労と栄養不良の影響がはっきり出ている。 体力が落ちているから、少しの刺激で熱が出たり、血圧が下がったりする」 ●尿検査 ・脱水傾向・感染なし ●レントゲン(胸部・腹部) • 臓器に異常なし・肺炎なし・ 腸閉塞なし・腸の動きはやや弱い ●腹部エコー • 臓器の形態は正常 ・脂肪が少なく、筋肉量も低い → 栄養不良の証拠 淳一 「結論としては、急性疾患ではなく、 慢性的な疲労と栄養不良が限界に達している状態。 治療は“休養・栄養・睡眠”が中心になる」 以上です。 2・楓:耳鼻科検査の結果 「次に耳鼻科の検査結果を説明します」 ●聴力検査 • 正常範囲・聴覚障害なし ●耳・鼻の検査 • 炎症なし・アレルギー所見なし ●喉の内視鏡 • 声帯にポリープ・結節なし • 炎症は軽度 • 声帯が閉じにくい“機能性発声障害”の所見あり 楓「つまり、声が出ない原因は 精神的ショック・強いストレス・過労によるもの。 “心因性失声症”に近い状態ね。 治療は時間がかかるけど、休養すれば必ず戻る」 以上です。 父:総合判断 「全体をまとめると――」 • 急性疾患なし • 臓器の異常なし • 命に関わる病気なし • 原因は • 長期の過労 • 栄養不良 • 精神的ストレス • 心因性の失声 • 体力の極端な低下 「まあ、これは“倒れて当然”の状態だ。 15歳から音楽事務所に入ったと聞いたが、まだ子供だっただろうに、 よくここまでよく耐えてきたと言える」 今後の治療方針 「陽一のやり方は間違っていない。まずは完全休養だな」 • 最低1〜2ヶ月は外出・仕事禁止 • 睡眠と安静を最優先 「次は栄養管理だが……陽一が作る料理はうまいらしいな」 皆がどっと笑った。 • 高カロリー食 • 消化の良いもの • 必要に応じて点滴継続 • 無理に食べさせない ●めまい・眼振 • 投薬 • 水分補給 • 急な起立を避ける ●声の治療 • 焦らず自然回復を待つ • 心因性なので安心できる環境が最重要 • 発声訓練は体力回復後 ●歩行・生活動作 • 車いす・歩行器の併用 • 無理な歩行は絶対禁止 父「陽一、お前が保護者として正しい判断をしている。 この子は“守られる環境”に置くことが治療そのものだ。 颯太君は、医療的にも心理的にも“限界まで追い詰められていた”。 今は、お前の家が“唯一の安全地帯”だ。しばらくは絶対に離すな」 陽一「ありがとうございます。お言葉に甘えます」 父「では、まとめるよ。 • 臓器の異常なし • 命に関わる病気なし • 原因は過労・栄養不良・ストレス • 声は心因性で、時間が経てば戻る • めまいは眼振あり → 薬で治療 • 歩行困難 → 車いす・歩行器 • 完全休養が必要 • 陽一の家が治療の中心 • 家族は陽一の判断を全面支持 以上でいいかな?」皆が拍手した。 陽一「お父さんも淳一も楓も、本当にありがとう。 俺は颯太を一生大切にしていくつもりだから、今後もフォローをお願いします。 それで……お父さん、お願いがあります。 颯太の症状が安定するまで、自宅で事務仕事とオンコールで対応してもいいでしょうか? 呼び出しには応じますが、せいぜい1時間が限界です」 父「いいよ。俺が毎日病院にいるんだから問題ない。 それよりも、せっかくオメガのかわいい颯太君と出会ったんだから、一生大切にしなさい。 お母さんもすごく喜んでいたじゃないか。こんな幸運は滅多にないからね」 陽一「はい。本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」 楓と淳一がパチパチと拍手を送ってくれた。

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