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第116話 最終回・打ち出の小づち
「陽一兄さ~ん!」
「颯太兄さ~ん!!」
「おい、颯太、呼ばれてるぞ。お前行けよ」
「ヤダよ。先生だって呼ばれてるじゃん。俺、クルクル回るの苦手なんだよ」
「可愛い妹のためだろ?」
「いや、俺って“めまい持ち”の持病があるでしょう?だから無理。先生行って」
颯太が汚い手を使った。
「くそー……」小声で言うと、
「へへへ~ん」と憎たらしい笑顔。
「誰だよ、遊園地に行こうって言ったのは?」
「それは陽一様でしょう?」
「……そうだった。だって“遊園地行ったことない”って言うからさ。
でももう4回目だぜ。俺がかわいそうだろ?もう~無理......」
颯太が両耳を塞いだ。くそー。
結局、俺はふてくされながら、えげつなく回る乗り物に乗る羽目になった。
「もう~陽一兄さん遅いよ~」と香菜。
「マジ遅いよ」と紗奈。はあ……。
「はいはい、紗奈に香菜、乗るぞ」
俺は目をつぶるしかなかった。
そして終わった瞬間──吐きそうになった。
げー……。
そのまま座り込む。気持ち悪い……。
「先生、大丈夫?」
「なわけないだろ!」
「もしかして無理して付き合ってくれてたの?」と紗奈。
今頃気づくか。
「そうだよ。俺も颯太もこういうのダメなんだよ。颯太はめまい持ちだから無理」
「俺も普段は静かにしてるから、こういうのは無理なんだよ」
「ごめんね、無理させちゃって……」と紗奈。
香菜は「いい子いい子」と俺の頭を撫でてきた。
……は?
そのあと水族館へ移動したが、俺と颯太は完全にダウン。
紗奈と香菜に声を掛けてから半年経った。
今日のSP体制は、
・香菜:SP2名+車1台
・紗奈:SP2名+車1台
・颯太:SP2名+車2台
・そして俺にもSP1名
……合計7名。
理由は、俺が立花家の養子になったことで、
「俺を誘拐して颯太を脅迫する可能性がある」
と本部が判断したらしい。
その代わり、颯太と行動を共にするから、
「特別に年間2000万でいい」と言われた。
……なんでそんな半端なんだよ。
それが俺の価値か?
どうせ颯太の基金から出すからいいけど、気分の問題だ。
遊園地で遊ぶだけでSP7名。
乗り物に乗るなら“そばにいないと警護できない”と言われ、
SPの分までチケットを買った。
なら代わりに乗ってくれよ。
颯太の100億の基金は利子が増えるばかりで、
いくら使っても減らない。
俺は“打ち出の小づち”って呼んでいる。
「颯太も少しは自分で管理しろよ」と言ったら、
「無理」と即答された。
……どんどん俺が使ってやる。
「陽一兄さ~ん! 颯太兄さ~ん!」
「ほら、香菜が呼んでるぞ。颯太行けよ」
「俺だってもう疲れたから無理」
「SPに行ってもらおうか?」
小声で言ったが、完全に無視された。
「よし、どっかで休もう……というか帰ろう!」
俺はもう動けない。
香菜と紗奈を手招きした。
「あのさ。もう疲れて動けないから帰りたい。ごめんね」
「うん、いいよ。分かった。さいなら」
「え?いいの?」
「うん。だってSPいるから問題ないよ」
「あ、そう……じゃあまたね!バイバイ」
……なんだよ~。
それを早く言ってくれよ~。
帰宅して水をキューッと飲み、
颯太と二人でバタンと倒れ、朝まで寝た。
なんだよ~。休みが消えたじゃないか。
もう若さにはついていけない。
まあ、楽しかったけどさ、
もうしばらくは休ませてくれ。
はい、さいなら~だよ......。
ー*ー*ー*ー
続編のお知らせ
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
この小説は完結しますが、書くのが楽しかったので続編を書きました。
タイトルは、
「歌えるようになったオメガと院長の、ふたりだけの秘密の続き」です。
またお会いしましょう。
スピカナより
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