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第115話 家族と料亭へ
亜矢さんたちを送り届け、家に戻った。
「颯太、朝から動きっぱなしで疲れたんじゃない?」
颯太はくすっと笑った。
「うん、疲れたけどね……先生が紗奈ちゃんたちに良いこと言ってくれたから、本当に良かったって思った。ありがとう」
「どういたしまして。四人兄弟になったんだから、これから少しずつ話しかけていこうよ。きっと学校では孤独だと思う」
「うん、そうだね。多分そうだろうなって思ったよ」
「じゃあ、ご飯にしようか。お腹空いたろ?」
着替えて冷蔵庫を開けた瞬間、思わず声が出た。
「うわ〜すごい!」
「え、なあに?」
「見てごらん」
冷蔵庫から料理を次々に取り出す。
颯太のかぼちゃポタージュ、俺が頼んだ具だくさんのすいとん。
さらに常備菜が四種類も並んでいた。
「ああ〜嬉しいの一言だよ。家政婦さんって神だね」
「ふふふ、それ聞いたら喜ぶよ。メールしとくね」
鍋で温めると、すいとんの良い匂いが立ち上る。
「颯太、すいとん食べるか?」
「うん食べる。かぼちゃのポタージュもあるけど、どうしよう?」
「それは明日にしよう」
器によそって食べ始める。
フウフウしながら口に運ぶと、心も身体もじんわり温まった。
今日の騒動のあとだから、余計に沁みる。
「うまいねえ。さすがだよ。ほんとありがたいよ」
「あはは、それも伝えとくね」
颯太も嬉しそうに頬を緩めた。
「そうだ、明日さ、実家に行かないと。みんな診療を休んで来てくれたから、お礼に行こう」
「あ、俺も行くよ。なんか持っていこうかな?」
颯太が気を利かせた。
「うん、そうだね。……いや、外食にしようか?その方がいいかも。
あ、この前の料亭に誘ってあげようよ。絶対喜ぶよ」
「いいねえ。そうしよう。お義母さんとお義父さんも初めてだよね?」
俺の提案に颯太も賛成した。
「うん。颯太も半分おごれ」
これからは颯太にも“お金を使う経験”を積ませないといけない。
「え?俺も?」
「颯太のお父さんのために来てくれたんだから、颯太がお礼をするんだよ。俺と半分ずつね」
「……うん、わかった」
実家に電話すると、父が大喜びだった。
料亭にも連絡すると「お部屋を開けておきます」と言ってくれた。
すぐに実家へ「明日の朝迎えに行く」と伝えた。
***
料亭に着いた瞬間から、母は興奮気味だった。
父も珍しそうにあちこち見回している。
部屋に通されると、例によって女将さんが挨拶に来た。
両親は目を白黒させていた。
……まあ、初めてならそうなるよね。
楓と淳一はもう慣れた様子。
良いのか悪いのか。
料理が次々に運ばれてきて、母の喜びは最高潮に達した。
家庭の主婦は料亭なんて来ないから、そりゃあ嬉しいよな。
「今日はね、俺と颯太で半分ずつご馳走するから」
事前に伝えておいた。
「へえ〜颯太もご馳走してくれるのか?」
父が嬉しそうに言う。
母も驚いていた。
こういう体験の積み重ねが大事なんだよね(笑)
「ねえねえ、颯太ってさ、いくら相続したの?」
楓がズバッと聞いてきた。
「ええ……っとねえ……なんだっけ?」
笑ってごまかす。
「颯太は多分覚えてないよ。ああいう場では軽いパニックになるから、記憶が飛ぶんだよ」
「あら、そうなのね」
楓は少し残念そう。
「じゃあ俺が教えるよ。ミツワの株式が10%。それと信託基金に100億かな」
全員が固まった。
「あのね、固まらないでよ。でも現金はないよ。全部信託に入ってるから下ろせないんだ」
「えーそうなの?」
「うん。再婚した亜矢さんも子供たちも同じ。換金できない資産なんだよ。
しかも信託だから、毎月決まった額しかもらえない。
それ以上欲しい時は弁護士に言って下ろしてもらうんだ」
「うわ〜不便だねえ。なにそれ?」
「そうしないと、騙されたり、詐欺師に狙われたり、誘拐されたりするから。
SPを付けるって山川さんが言ってたよ。三人なら年に3億近くかかるかも」
「えー??信じられない」
楓もびっくり。
「え?じゃあ颯太も1億かかってるの?」
母が驚くと、
「えへへへ」
颯太が照れ笑いした。
……分かってるじゃん。
「だから子供たちのお小遣いも、高校生は3万、中学生は2万なんだよ」
「へえ〜意外と堅実なんだな」
淳一が感心した。
「これから亜矢さんの娘たちと四人兄弟になったから、時々誘ってお茶でもしようと思うんだよね。
学校で友達がいないらしいんだ」
父が頷いた。
「そうしなさい。飛び抜けた金持ちは敬遠されるよ。きっと孤独なんだと思う」
「うん、俺もそう思った。これからSPも付くし、普通の子供みたいな生活は無理だよ」
「かわいそうだねえ……」
楓もようやく理解したようだった。
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