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第45話「僕らの甘い甘い夜」

【1月4日日曜日22:00】 パーティはお開きとなり、僕はシュウと共に皆を見送った。 バンケットルームはクローズされ、ホワイエでは皆が名残惜しそうに挨拶を交わしている。 そこに現れた一組の老夫婦に、シュウが気がついた。 「魚住様!お加減はいかがですか?」 「ありがとう。もう大丈夫ですよ。パーティは遠慮しましたが、授賞式は見させてもらいました」 正月に胃腸炎で具合が悪くなったというじいさんだ。 僕もカラテア工房を通し、指名してもらったことがある。 「キヨチカくん、カラテア工房からの独立おめでとう。名刺をいただけるかね?」 僕は両手で名刺を渡す。 「どうぞ、今後ともよろしくお願いします」 「もちろんだよ」 僕に祝いの言葉を伝えるために、パーティが終わる時間を見計らって来てくれたのだ。 その心遣いが、本当にありがたかった。 — 僕は、クロークに預けていた四角い箱を受け取った。 シュウが不思議そうに問う。 「それは?」 「岩山が持ってきてくれたんだ。フクロウさんからの卒業記念品だって」 「へー、何でしょう?」 「紅白饅頭らしいよ」 僕らは近くにあったベンチチェアに座って、箱を開けた。 本当に、ピンクと白い真ん丸なお饅頭が並んで入っていた。 ピンクにはカラスの焼印が、白には文鳥の焼印が押されている。 「二人で食べろってことかな?」 「今、いただきましょうか」 シュウが白いお饅頭を手に取る。 僕はピンクを口へと運ぶ。 「キヨ、美味しいですか?」 いつかのファミレスのように、僕に聞いてくれた。 「うん。とても美味しい!」 お饅頭の下から『飛翔』と書かれたカードが一枚出てくる。 僕はそのカードを大切なものとして、胸ポケットへしまった。 — シュウの自室であるフェイジョアホテルのスイートルームに、二人揃って帰ってくる。 大勢の人と会話をし、とても疲れていたけれど、とても充実し満たされていた。 というより、今もなお、脳が興奮しまくっている。 お饅頭を食べただけでは気持ちは静まらず、とてもじゃないけれど、眠れそうもなかった。 「……キヨ」 僕だけではない、シュウも気持ちが高ぶっているのだろう。 部屋に入った途端、僕を両手で、きつく抱きしめてくれた。 「シュウ……」 誘うように名前を呼べば、僕の口を塞ぐ、甘い甘いキスをしてくれる。 甘いキスは、すぐに深く深くなった。 僕の欲望は膨らんで、あっという間に抑えが利かなくなってしまう。 「ねぇ、シュウ。抱いて、抱いてよ。僕、なんかすごく、シュウが欲しくて堪らないんだよ」 昂ぶり過ぎて泣いてしまいそうな声で、そう伝えた。 言い終わらないうちに、自分でスーツのジャケットを脱ぎ、ベストを脱ぎ、ネクタイを外す。 シュウも、タキシードのジャケットを脱ぎ、カマーバンドを外し、蝶ネクタイを取った。 互いのシャツのボタンを外し、ベルトを外し合う。 まだ触れ合ってもいないのに、僕の呼吸は期待感で乱れてゆく。 「シュウ……」 まだ全てを脱ぎきっていないのに、シュウの唇が僕の首筋を這った。 腰の力が抜けてしまった僕は、じりじりと後退し、夜景が一望できる大きな窓を背に、追い詰められる。 「あっ、シュウ、シュウ……」 何度も、何度も、愛おしい人の名前を呼ぶ。 その人も、僕の名を擦れた声で呼んでくれる。 「キヨ……、私の、かわいい、キヨ……」 大きなベッドは、すぐ隣の続きの間にあった。 それでも、そこまで移動する時間が待てなかった、僕も、シュウも。 シュウが手を伸ばし、ワークデスクの引き出しから、オイルを取り出した。 「ど、どうして、そんなところに……」 鼻孔をくすぐるイヤらしい香りのオイルが、シュウの指に垂らされるのを見ながら、疑問を投げかける。 「夢、でしたから。この夜景の前で、キヨと、するのが……」 そんなことを言われたら、僕はもうシュウに縋りつき、喘ぎ続けることしかできない。 「んっ、あっ……あっ」 「窓に手をついて、キヨ」 素直に従えば、熱くなりすぎている身体に、窓の冷たさが気持ちいい。 僕の手にキヨの手が重なって、より密着してきた。 この部屋より高い建物はこの辺りには、無い。 視線を気にする必要がないと分かっていても、羞恥心が沸き、より激しく乱れてしまう。 「あぁ、キヨ、とても、とても、いいよ、キヨ……」 艶っぽい声が僕を褒める。 けれど僕にはもう、言葉など発する余裕はない……。 シュウの腰の動きが早くなって、もう、もう、全ての感覚が鋭くなっていって……。 「いいっ」 「んぁっ」 二人で共に、果てた。 — シュウが湯船にお湯を張ってくれ、二人で一緒に浸かった。 少し気を抜くと、すぐにまた欲望に火が付きそうだったけど、必死にリラックスを心掛ける。 「キヨ、明日にでも軽井沢へ戻りなさい。そうしてどんどん新しい椅子を生み出しなさい」 「シュウも会いに来てくれる?」 「えぇ、週に一度は必ず」 「今のマンション、解約しちゃっても、いい?」 「そのほうが、管理人のソラも、彼の愛犬のハルチカも喜びますよ」 「ハルチカ?」 「伝えていませんでしたか?あの白い犬の正式名称です。私が名付け親なんですよ」 僕の名前の一部を、ハルにつけていたわけだ。 「……シュウ、僕のことずーーーっと大好きだったんだね」 「知りませんでした?今も昔も、キヨチカのことを愛し続けていますよ」 「僕だって」 熱い湯にのぼせそうになって、それだけを口にするのが精一杯だった。

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