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§37-1 渇愛に結ぶ花の契り*

 瞳の奥に燃える互いの色欲を映しながら、絡み合う視線に倣って口づけを深くする。  さっさと舌を出してねだるように小さく喉を鳴らし、グレンにもしてほしいと強請る。すぐに汲んでくれた大きな舌が熱い痺れを伴って咥内に入り込んでくる。 「んぁ……」  吐息と共に、甘く熟れた声が漏れた。  もっともっとグレンを感じたくて、彼の首に抱きついて、貪るように舌を啜る。艶めかしい吸引音が互いの鼓膜を揺らす。 「ライ……ッ」  熱に掠れた声が、俺の理性を焼き切るように響く。  グレンに呼ばれる自分の愛称がここまで胸震わせるものだとは思ってもいなかった。けれどもう、身体は憶えている。  グレンは抱きつく俺の膝裏に太い両腕を差し込んで、簡単に俺の身体を持ち上げる。察知していた俺は彼にすべてを委ねるように腕の力を強めて、首筋に顔をうずめる。  風呂に入っていないグレン自身の匂いが頭の中を満たしていくのが抗いがたいほど気持ちいい。  俺の背中を優しくベッドに下ろし、革靴を脱がせてくれる。一瞬離れた唇の隙間すら惜しみながら、名残惜しげに視線を絡ませ、グレン自身の靴も素早く脱いだ。  もう今すぐにグレンのすべてが欲しい。焦がれるような渇望が胸を焼く。俺のすべてを明け渡したい。  グレンのシャツのボタンに微かに震える指で手をかける。しかしひとつひとつのボタンを外す間も惜しい。  謝るべき相手は誰なのか分からないが、衝動のままにグレンのシャツの前を力任せに左右に引っ張った。  案の定飛んでしまったボタン。硬いそれが床に落ちる小さな音が響く。けれどすぐにむわっと鼻に届いたグレンの匂いで愉悦に浸る。 「悪い子だな」  グレンは楽しそうに目を細めて、意地悪く俺のシャツのボタンをひとつひとつ緩慢な手つきで外していく。指先が肌を掠めるたび、ぞくりと背筋が震えた。 「はやく……」  吐息交じりの懇願が漏れる。焦れて仕方がない俺はグレンの顔を両手で挟み、舌を上前歯の裏に差し込む。歯裏を舌先で懸命にくすぐりながら催促する。  もしこの状態でグレンが歯を合わせれば俺は死ぬんだよな、と熱に浮かされた頭でどうでもよいことを考える。  ボタンを外し終わった手が身体の下に入り込み、俺の腰を持ち上げる。自然と無防備に腰や胸あたりをグレンへ差し出すような姿勢になる。 「悪い子には仕置きが必要だな」  獣が獲物を見定めるような目。凶悪な笑みを浮かべて濡れて光る長い舌を出す。全然こわくない。早くその舌で……。 「あぁッ! んっんっ、んぅ……」 「ハァー……ッ」  すでに固くなって存在を主張する胸の飾りに熱く湿ったグレンの舌が触れる。舌の先端で強く弾かれるたびに快感の波が身体を揺らす。 「ここも随分と快感を拾えるようになったな」 「ンンッ、おかげ、さまで……」  悔しいけれど、事実だった。実際、触れ合い始めたころはくすぐったいという感覚が強かった。しかし今はすっかり彼に与えられる悦びを知る性感帯のひとつだ。  グレンは胸を舌で可愛がりながら器用な手つきで俺のベルトを外してパンツを脱がす。あろうことかパンツだけではなく下着まで一緒に抜き去った。 「俺だけ……いやだ」 「安心しろ」  自分のものとは思えぬ甘ったるい声。こんな声が出せる自分に驚く。駄々をこねる子供のようだ。  そんな俺に深くキスしながら、自身も身にまとっているものをすべて脱いでいく。露わになる逞しい肉体に、ごくりと喉が鳴った。  急いでベッドに来たので忘れていたが、部屋の明かりが煌々としたままだ。  いつもはベッドサイドのほのかな明かりの中で触れ合ってきた。それがどうだ、今夜は欲に濡れた瞳までお互いの姿がありありと見える。  恥ずかしさもあるが、それよりも今は早くグレンと繋がりたいという本能が勝る。 「グレンッ、早く、ほしい……」 「……しっかり解してからだ」 「んぅ……分かったから、早く」  快感で脳みその中の螺子がところどころ錆びてしまったのかもしれない。俺は恥ずかしげもなく太腿を左右に開く。そしてここ数週間指でしか触れてもらえていない、熱を持ち始めた蕾の横に両手を添える。  生唾を飲み込むグレンに、もっとよく見ろと見せつけるように両手で蕾を少し開いて見せる。 「チィッ……! 煽るな!」 「だって、早くしてほしくて……ひゃあ! ア、ンッ!」  怒ったようなグレンが俺の膝裏をぐっと押し、さらに無防備に蕾を上向かせる。  一瞬のことに驚いている中、蕾にぬるりとした熱く柔らかな何かが触れる。……グレンの舌だった。 「ああぁ、ンッんっ、きたないからぁだめっ」 「お前の身体はどこもかしこも綺麗だし、甘くいい匂いだ」 「うそぉ……んあっ」 「集中しろ」  ぺちん、と尻を軽く叩かれる。それさえも軽い快感に変わり、俺の欲をさらに硬くする。  熱い舌が蕾を刺激する度、意思とは無関係にひくひくと下腹が痙攣する。  柔らかくなった蕾が蜜を求める花のように舌を受け入れようとしはじめる。  ぐっ、と舌先に押し広げるような力が込められたのを感じる。ついに蕾を割るようにグレンの舌が入ってくる。 「ふぅ、んんっ、ハァ……あ、あっあっぅ」  息がうまくできない。  股の間越しに絡む視線とともに、長い舌がまだ余っていることを知る。随分解したつもりだったが、グレンの言う通り彼のものを受け入れるならもっと奥まで進めてもらわないといけない。  秘部に愛する人の舌を差し込まれるという、恥ずかしいことこの上ない状態に背徳感と共に興奮してしまう。  俺は昂ぶりを我慢できず、自分の熱く張り詰めた欲を掴んで擦る。  しかし、それを見たグレンの大きな手によって制される。

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