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§37-2 渇愛に結ぶ花の契り*

  「我慢できない……ッ」  涙声で懇願する俺の顔に鋭い視線を向けると、舌をぐぐっ、とさらに奥へ強く差し込む。  すると、舌がある一点を刺激して息が止まりそうになるほどの快感が身体を走り抜ける。これまで指で解されるときに念入りに快感を覚えさせられたところだ。 「ひッ……そこぉ~……ッだめ」  執拗にその一点を擦り上げられ、快感が集中しすぎて自身の欲を触る余裕がなくなる。それで気付く。  ああ、なるほどグレンは中だけで達せるようになれと言いたいのだ、と。 「気持ちいい、からぁ……ぁあ! ンンんッ」  思考が快感に溶かされる。ぬるぬると動きを止めない舌が内壁を舐め上げながら段々と奥のほうまで進んでいくのが分かる。  その間も一番敏感なところは刺激され続ける。頭の中が溶けてしまいそうだ。  そのうち、ついに舌先が最奥まで到達した。トントンッ、と軽く突かれるとなぜか先ほどまで触られていた乳首がきゅん、と反応する。  触られていないのに、乳首を舌で弾かれているような不思議な感覚を感じてだらしなく喘ぐ。 「アァッ、やあっ! おくっ、奥ダメだ、グレンっ」  グレンは俺の言うことなど聞かずに、腰を高く持ち上げなおして入り口近くの敏感な部分と奥の両方を同時に、巧みに強く刺激する。  精を吐き出す感覚とは違う、経験したことのない、身体の芯から蕩けるような快感が頭の中を侵食していく。舌の形に変わっている肉壁が受け取ってしまう気持ちよさを止められない。 「ん、ンっ、あぁッ! ……ハァ、ん! なんかくるっ……やぁ、グレンッ」  自分一人で気持ちよくなってしまっている。けれどもう自分の身体の手綱は握れず、グレンにされるがまま。それが悔しいのに、なによりそれが一番気持ちいいのだ。 「ン~ッ!! あ、あ、あっだ、め、ひあゃ、アアアああぁッ!」  言葉にならないただの音を叫びながら、尻に入れられた快感だけで気をやった。腹に熱い白濁が飛び散る。  自身の屹立を扱いて達するのとは違う、深い海に投げ出されるような心もとなさ。何より全身、指先まで力が抜ける。  ずる、と名残惜しげに舌を抜いたグレンが俺の頭を撫でる。優しい手つきで汚れた腹をタオルで拭いてくれる。 「後ろだけでいけたな」 「んっ……」  頬へ添えられた大きな手にすり寄って快感の暴挙に耐える。  震える身体を抱きしめられるとようやく彼の腕の中で安心できた。 「舌を入れるなんて……きいてない……」 「良かったか?」 「……俺だけきもちいいのは、やだ」  気持ちよかったことを否定するわけではない。グレンもそれは分かっているのか、クスリと小さく笑ってベッドサイドにある水差しからグラスに水を注ぎ、飲み干す。もう一杯水を注いで口に含み、俺に口移しをしてくれる。生温い水が甘く感じた。  当たり前のような一連の動作に愛しさが募り心くすぐられる。 「グレン……早く……」 「前に、お兄様が持たせてくれた箱があるだろう?」 「うん......?」 「あれには、まだ挿入に慣れていないうちに役立つ飲み物があった。俺のほうでも用意してはいるが。……お前の負担を考えれば、飲んでおいたほうが楽に受け入れられる」 「副作用は?」 「少し酒に酔うような感じだそうだ」  俺の頭と髪を優しく撫でながら諭すように言うグレンの話を大人しく聞く。聞くには聞くが、それに従うかはまた別の話だ。 「飲まない。初めてなんだから素面でやる」 「……どうしてもか」 「あぁ」 「……はぁ、強情だな」  呆れたような、愛おしむような吐息。息が整ってきて身体が動くようになった俺は、グレンの過保護な言葉に少し苛ついた。  苛ついた気持ちに任せ、油断し切っている彼に寝技をかける。 「うおっ……!?」 「油断は禁物、だろ」  悪戯っぽく笑ってグレンを自分の身体の下に組み敷くと、瞬時に両腕を頭の上にまとめる。ほぼ同時に氷魔法でグレンの腕を拘束する。 「ライッ……やめろ」 「い、や、だ」  先ほどからグレンの欲が硬さを保ったままなのを見逃す俺ではない。  ベッドサイドに置かれていた潤滑油の瓶を手に取り、グレンの熱い欲にとろりと垂らす。  そして、舌ですっかり“ぐずぐず”に溶かされた後蕾へグレンの欲をあてがう。 「んッ……はぁっ」  異物が入ってくる感覚に強く息を吸う。 「待て、被せもしていない、ッ」 「いらな、い……ッ! そのまま、感じたいんだ……ぁあ、ッんんん!!」 「グッ……!!」  グレンが苦悶の表情を浮かべる。先端の一番大きな部分を飲み込むと、さっき舌で弄られた強く快感を拾う部分に当たってしまう。 「アッ! んぅ、はぁ……ああ、んッ! きもちい、ぃ」 「ライ、っ頼む、外してくれ……!」 「や。グレンに、魔法を仕込まれた……のも許せない……っ。おれ、俺の、グレンなのに……ッ」  そうだ。俺だって苛ついている。俺の知らないところで俺のグレンに魔法を仕込んだ奴など、氷漬けにして粉々にしてやりたい。  なぜ今その話が出てくる、という抗議の表情を浮かべるグレンは無視する。  怒りと快楽に苛まれてぐちゃぐちゃになった頭で、ひたすらグレンの欲をすべて受け入れることだけ考える。  入るには入ったけど、入れてすぐの快感を拾う部分があまりに強く邪魔をして、自分ではなかなか腰を落とすことができない。 「あぁん、ッ、お、っきい……ッひ!?」 「一人で癇癪を起すなんて、らしくない、なッ」 「アぁっ! んやぁっ、ぐれ、ンンッ!?」  突然。グレンにがっしりと腰を掴まれ、杭を強く打ち付けられる。  なんで、拘束は……?  思考のまとまらぬままグレンの腕を見ると、氷が溶けて水滴がシーツを濡らしている。なるほど、炎魔法の熱で溶かされたらしい。 「油断は禁物、だろう?」 「ンッ、ンンッ! ま、ってぇ、強いッ」  身体が真っ二つにされそうだ。待ち焦がれていたグレンの屹立を受け入れられた。嬉しい気持ちが胸の中で花開くように広がるが、あまりに強い快感がそれをあっという間に上塗りしてしまう。  怒らせてしまったのか、グレンは俺のか細い制止を無視して腰を打ち続ける。 「あぁッ、あっ! あ! いあぁッッ」 「ハァ、フゥ……くっ」 「~~~無理ぃッ、グレン、ごめんなさ、まっ、待ってッ」  ついには泣き出した俺を見て、グレンがハッとした顔で腰の動きを止める。 「うぅ……おこんない、で……」 「ああ……すまない、怒っているわけではないんだ。泣かないでくれ」  身体はつなげたまま、グレンが起き上がり、しゃくりあげながら訴える俺を壊れ物を扱うように優しくベッドに組み敷いた。  動くときに自然と与えられる刺激に小さく喘ぎながら、涙の流れ続ける目でグレンを見つめ首に腕を回す。 「グレン、ごめん……っ」 「お前は悪くない。謝るな」  頭を抱え込まれ、額を合わせて羽のように優しいキスが降ってくる。あぁ……いつものグレンだ。

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