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§37-3 渇愛に結ぶ花の契り*

  「焦らすつもりはなかったんだ。ただ、お前を大事にしたかった」 「……うん。俺も、ごめん……」 「いいんだ。それだけ俺のことを愛してくれているから、怒ってくれたんだろう?」 「うん……ッ、好き……愛してる、グレン」 「俺もだ。ライのことが大好きだし、愛している」 「……うれしい」  陽だまりのような微笑みに、心を苛む氷が溶けていくようだ。  触れるだけのキスを顔中に落としながら、俺が泣き止むまで辛抱強く待ってくれる。  この優しい腕の温もりを知ってしまったらもう抜け出せない。  そしてこの温もりを知るのは俺だけがいい。これまで抱いたことのない強大な嫉妬心は些か手に余る。  だが、今はただグレンを感じたい。 「もう動いて、大丈夫か」 「うん……ッ」    本当にゆっくり、ゆっくりと腰を引いて差し込む動きを繰り返す。グレンだって早く強い快感を拾いたいはずなのに。 「だいじょぶだから、もっとして?」 「あぁ……かわいいな……」  俺の言葉を信じてくれたのか、段々と腰を打ち付ける勢いと速さが増していく。  改めてその質量と大きさに慄きながらもしっかりと快感を感じられているのは、丁寧に解してくれたグレンのおかげだと悟る。 「ふっ、ン! あっ、あ、おっきいぃ」  奥を突かれるたびに声が漏れる。 「ハッ、……く、うッ……あまり締め付けるな」 「ンンッ、わかんな……あぁ、んうッ」  奥歯の横から熱い息を吐き出して堪えている様子のグレン。 「出そう、なのか」 「……あぁ、思っていたより遥かに良くて、今にも持っていかれそうだ」 「……出して、くれ。お願いだ、全部中に」 「……ッあとで文句を言うなよ」  俺の懇願に、欲望の炎を宿した瞳孔が開く。  グレンが先ほどよりも一層腰を強く打ち付け、一瞬息が止まる。そのままの勢いで続けられる抽挿に驚くほど情けない声が出る。 「ひぁ、ッう! ん、うあぁっ! あ!」 「ハッ……あぁ、ライ……」 「あ~ッ! ぐれ、んッダメだ、あっ、やあ……アァッ、いく、ぅっ」 「大丈夫だ……一緒にいこうな……」 「あぁっ、んっ、いく、いっしょに、……だめだめ、ア! ッい、く……!!」 「クッ……ライッ!!」  咆哮のような声が響き、グレンの欲から勢いよく吐精されたのを腹の中でにわかに感じる。俺自身も腹の上に白濁を吐き出した。  熱くて、長い。まだ、中で脈打っている。  やっと、やっとだ。 「なにを笑っているんだ……」 「ん……? グレンを受け止められたのが、嬉しくて」  脱力した手を愛おしむように自分の腹に添える。グレンは目を見開いた。  そして同時に、まだ入ったままのグレンの欲がまた一段と熱を帯びて大きくなったような。 「ぁん……ん、なんか、まだおっきい……?」 「……すまん。言い忘れていたが、獣人は完全に発情したら中で大きくなって小一時間抜けん」 「……へ?」  間の抜けた声しか出ない。俺の声をグレンがキスで飲み込んだ。 「あれだけ可愛く煽ったのだ。最後まで付き合ってもらうぞ?」  完全に悪役顔だ。  どうやら理性のタガが振り切れたらしいグレンは、俺の身体を起こして入れ替わるように自分が寝転がる。 「あっ、なに……っ?」 「先ほどは慣れていなくて動けなかっただろう? しかし恥じらう姿が絶景ではあった。もう一度やってくれないか」 「えぇ……自分で?」 「だめか?」 「だめじゃ……ないけど……気持ちよすぎて、こわい」 「大丈夫だ。俺がちゃんと支えている。遠慮なく気持ちよくなっていいんだ」  駄々をこねる幼子をなだめるような口調だ。  俺は羞恥心よりも求められている悦びが勝ってしまい、促されるままにゆるゆると腰を動かし始める。  グレンの言う通り、先ほどよりも格段に動きやすくなった。吐き出された精がさらに滑りを良くしてくれているのもあるが、段々と奥のほうが開けている感覚がある。  グレンは懸命に腰を動かす俺の両手をとって指を絡める。俺はその手を支えにして、自分で動きながら気持ちのいい場所を探す。 「あーッ、これ、奥、気持ちいい……!」 「好きなだけ動け」 「んっんっ、ひ、アァッ……まってまって、うぅンッ!!」  強い快感が襲ってきて、つい腰の動きを緩慢にしてしまう。 「どうした」 「……またいっちゃいそう」 「……何度いったっていい。俺ので気持ちよくなってくれているんだろう?」 「うん……グレンの、きもちいい」 「じゃあ何も気にすることはないな?」 「うん……? そうだな……」  回らない頭で舌足らずな会話。支えてくれる手に優しく腰を撫でられると何も考えられなくなってしまう。  俺はグレンの言う通りに身を任せてまた腰を動かす。  はしたない濡れた水音が部屋に響く。あぁ、こんなに格好いい人が俺の伴侶だなんて。まるで夢を見ているのかもしれない。  強く握ってくれる大きな手が頼もしく、もう頭の中はただひたすらに「グレンを愛している」ということでいっぱいになってしまっている。 「はぁッ、ンンッ、グレンっ好きっ、だいすき……っ」 「ッ……俺も、大好きだぞ。本当にかわいいなライ」 「んっンッ、かわい……?」 「あぁ、俺の伴侶はとびきり可愛い。世界一だ」 「んっ、うれしい……あ、あ~ッまたくるぅ……ッいく、グレンっ……!」  ひときわ強く打ち付けた腰。  グレンもまた応えるように軽く精を吐き出したようだ。  俺はというと、白濁とは違う半透明の液体を断続的に噴き出していた。 「あ……んぅ……」 「よくがんばって偉いな」 「ん」  くたり、と糸が切れたようにグレンの胸に倒れこむ。大きな手に頭を撫でられながら、未だに引かない熱に浮かされて下半身がひくひくと震える。

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