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第2話

後ろから俺に近づいて来る気配がして、腕を横に伸ばしブンッ、と後ろに振り回した。 その腕をパシッと取られて振り返る。 「架月、もうそいつ意識ねえよ」 「···ああ、太陽か。こいつらの仲間かと思ったー」 「殴るのは確認してからにしてくれ」 「ごめんごめん」 拳の部分が痛い。血が滲んでいてそれを見た太陽が眉を寄せる。 「帰ろう」 「まだ帰らないよ。だってほら、あそこの奴もう起きてる」 「···あれが終わったら帰るからな」 その言葉に返事することなくそいつに向かって走り後ろから蹴りを入れた。地面に顔をぶつけた男は振り返って恐怖の色に染めた目で俺を見た。 「お前が起きるから帰れないじゃん」 「ご、ごめんなさい···っ!許して、くれっ」 「無理」 爪先で男の顎を蹴り上げる。意識を飛ばし倒れた男に何だか笑いが溢れてくる。 「架月···」 「···もう、わかってるよ、帰るってば」 鋭い目で俺を見る太陽が俺の腕を掴み、ひっそりとした暗い路地裏から引っ張り出された。 「うわ、眩しっ」 「まだ真昼間だぞ。これからもこんなの続けてたら浅羽組に目付けられる」 「付けられたとしても、それは俺だけだよ」 だって太陽は何もしてないんだから。 ふふッと笑って顔に飛んでいた返り血を拭う。 乾いてしまったようでパリパリと固形になってしまっててそれが顔から剥がれる感覚が何だか面白い。 「腹減った」 「そんな格好じゃどこにも行けねえよ!」 「家帰る」 「ああ」 俺が逃げないようにか腕を掴む手の力は緩められる事がない。 そんな事してたら変な目で見られちゃうよ?体の彼方此方に血が飛んでいる俺を嫌な目で見てくる奴らなんて沢山いるんだから。 ···そんな俺と一緒にいたら太陽まで同じにされちゃう。 「太陽、逃げないから離して」 「何でだよ」 「太陽まで変な目で見られるよ」 「別に、俺はお前がいたらそれでいいよ」 「···かっこいいね」 キラキラ太陽の光を反射する金髪。 光を反射するって言ったら俺だって銀髪だからそうだけど、太陽は本当に光みたいな存在だから、何だかすごく眩しくて、少し切なく思えてしまう。 「絶対また母さんに怒られるな」 「困ったなぁ。俺、怒られること大嫌いなのに」 「なら服汚すなよ!」 ケラケラ笑いだした太陽。いつもと同じ感じに戻ってる。さっきまでは少し怖かったからちょっと安心した。 「学校、またサボっちゃったね」 「まあそれについては俺も怒られるから···気が重いな」 「兄貴のところ行く?」 「···行かない。もう2度と行くか」 「···ごめん」 俺たちはあの日以来、会えなくなった。初めて俺たちをわかろうとしてくれた奴に。初めて、すぐに心を開けた奴に。 兄貴の家で出会い、兄貴の家で別れ。 だからか今は、兄貴っていう存在に少し嫌気が指していた。

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