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スイッチの入った宇佐美さん

 告白に向かう乙女みたいにどきどきしながら、車を走らせる。  あれからさらに数日。ようやく、宇佐美に会える時がやってきた。同期に怪しまれながらも手に入れた情報によると、宇佐美は数日東京へ出張していて、帰る予定が昨晩遅くだったらしい。だから今夜は家におるはずや。  アポは取ってへん。連絡しても無視される思うたから。やから、もしかしたら出かけてる可能性もあるけど。  とりあえず突撃しようと思うた。宇佐美は変なとこで優しい性格が出るから、家まで来たやつを追い返すことはよっぽどのことがないとあらへんやろうし。まあ、俺がよっぽど嫌いやったらあるかもやけど。  そん時はそん時や。  宇佐美のマンションに着いた。近くの駐車場に車を置くと、歩いて宇佐美のマンションのエントランスへと向かった。パネルの前に立つと、事前に高坂から聞いておいた宇佐美の部屋のボタンを押した。  数秒後。 『……何してんの?』  と聞き慣れた声がスピーカーから聞こえてきた。家におったみたいやな。 「急に来てごめんな。ちょお、話があんねん」 『…………』  また数秒後。 『ロック開けた』  そう返ってきたので、ありがとう、と礼を言うて、中へと入った。帰れ言われへんくてよかったわ。とエレベーターの中で胸をなで下ろす。いや、正直成功率は半々やと思うてたから。  エレベーターを降りて、宇佐美の部屋を目指そうと歩き出すと。廊下のずっと先の扉がすっと開いた。遠くから宇佐美が顔出しとんのが見える。俺は少し早歩きでそこへ向かった。    俺が目の前まで来ると、宇佐美はじっと俺の顔を見とった。笑うてはないけど。不機嫌ではないみたいや。 「何しに来たん?」 「やから、話があってきてん」 「何の?」 「ここでは話せんから、中入れてくれるか? あかんかったら、ここで言うてもええねんけど、それはそれでお前も恥ずかしい思いすることになるかもしれへん」 「はあ……」  宇佐美はわけ分からん、という顔をしつつも扉を全開にして俺を通した。 「お邪魔します」  俺はさっさと靴を脱ぐと、勝手にずんずんと中へと進んだ。リビングで宇佐美を迎え撃つ。  宇佐美がリビングへと入ってきた。仁王立ちで宇佐美を待っていた俺を怪訝そうな表情で見る。 「……座らへんの?」 「ええねん。用件、先に言うわ。だらだらしても意味ないし」 「なんなん? ほんまに」 「宇佐美」 「何?」 「抱いてくれへん?」 「……は?」  宇佐美が眉を潜めた。 「何言うてんの?」 「やから。俺を抱いてくれへん?」  そこで俺の言葉の意味を理解したらしく、宇佐美が急に顔を赤くして慌て始めた。 「……いやいや、ちょお待って。なんで、突然、そんななんねん」 「説明したほうがええか?」 「そらそうやろ」  そこで、俺は勇気が萎んで逃げ出す前にと、なるべく手短に説明した。 「俺な、宇佐美に乳触られまくって、他で勃(た)たんようなってもうてん。ほんで、もしかしたら宇佐美に惚れてるんちゃうかと思うて、とりあえず宇佐美とヤったらはっきりするかと思うてな。あ、やけど、宇佐美はそこはなんも気にせんといてくれたらええねんけど」 「……そこって?」 「やから、俺が宇佐美に惚れてる云々のとこな。別に宇佐美にそこんとこでどうこうしろ言うてるわけちゃうねん。それにな、もしかしたら、一回ヤってもうたらスッキリして他でもできるようになるかもしれへんやろ? やからとにもかくにも試したいねん」 「…………」  宇佐美は何も言わへんかった。さっきの慌てた様子も今はない。静かにじっと俺を見つめとる。何を考えてるんか読まれへん。 「……お前、嫌言うてたやん、俺に触られるん」 「あれは……嘘やねん。ほんま、ごめん」 「……嘘?」 「あん時、あのまま流されそうになって、やけど、宇佐美は大事な仕事仲間やしあかんと思うてん。それに……怖かったわ」 「怖い?」 「おん……。なんかな、このまま進んだら俺はどうなるんやろうって。歯止めが利かへんくなるような気がしてん。それが怖くて……嫌や言うた」 「…………」 「やけど、結局そこで止めたせいかどうか分からんけど、こんな体になってもうて。やから、嫌や言うたくせに申し訳ないんやけど……協力して欲しいねん」  そこでまた、宇佐美が黙った。宇佐美が頭ん中で色々考えとんのが分かる。それが、俺にとって吉と出るかは分からへんけど。  やがて、宇佐美がゆっくりと口を開いた。 「なあ」 「ん?」 「もう一回言ってくれへん?」 「……何を?」 「……俺に何して欲しいか」 「ええけど……なんで?」 「ええから言うて」 「おん……」  わけの分からんまま、もう一度宇佐美にお願いした。 「俺を抱いてくれへん?」  宇佐美の顔が、俺の乳を眺めとる時によう見せる、悦の入った表情に変わった。そしてはっきりと答えた。 「ええよ」

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