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第11話

「……⁉︎ あとで……絶対に後悔させてやる……っ」 「威勢がいいな。その涙が枯れるまで、たっぷり可愛がってやるよ」  ゴウはそう笑うと、震える朱雀の肌を再び貪るように愛撫し始めた。      シオンは客の通らない業務用の薄暗い廊下を、給仕室へと急ぐ。  ゴウはゆっくりたっぷり用意しろと念を押していたから、走る必要はなかった。けれどそれは食事の準備に対してだけで…… 「  っ」  廊下は華やかな表舞台とは対照的に、湿った木の匂いと雑多な生活の臭いが混じり合う薄暗い場所だ、そんな廊下の角を曲がったところで、行く手を阻むように数人の影が立ち塞がる。  シオンの細い手が胸の前でぎゅっと握られて、長い前髪の下の顔には見つかってしまった、と言う表情が浮かぶ。  ずらりと並んだ、シオンと同じ灰色の着物を着た、まだ客を取れない水揚げ前のフラグメントと呼ばれる宝石人達が壁を作る。 「何、その顔」  突き出された手がシオンの肩を押し、細いシオンは弾かれるようにして壁へとぶつかった。  背中にじわりと痛みが広がったけれど、シオンは唇を引き結んでわずかの声も漏らさず、じっと耐えるように拳を握って俯く。 「朱雀さまのお付きがそんなにバタバタどこにいくのかなぁって、聞いてあげようとしただけなのに」 「なんでそんな顔するんだよ!」  乱暴な手がシオンの曇天を映したような灰白の髪を掴み上げる。  頭皮が引っ張られて毛の抜ける音が鈍く骨を伝って響いたが、シオンはじっと我慢したままだった。  彼らは掴み上げられた髪の下から覗くシオンの瞳を見てくすくすと嘲笑う。 「相変わらず、きったないレイテンシ・グレーの目」  そう言いながらシオンを見下ろしてくる彼らの瞳はすでに宝石のように煌めいており、それぞれがどのような宝石の涙を流す価値があるかを十二分に理解していた。  この場で、自分の本質がわかっていないのは涙を流したことのない宝石人が持つレイテンシ・グレーの瞳のシオンだけだ。  まだ自分がどのような宝石かもわからずに揺れる灰色の瞳は、他の宝石人から見れば薄汚く差別の対象だった。  ましてやそんなシオンが、この娼館の最高位のプレシャスである朱雀の付き人をしているのも、彼らの加虐心を煽る一因になっていた。 「鼠色がいると気分が悪くなるんだよね!」 「大人しく隅っこに居ろよ」 「チョロチョロしやがって!」 「…………でも、朱雀さまの食事をとりに…………」  シオンが視線を落としたまま静かに答えようとするが、中心にいた赤い瞳の宝石人がサッとシオンの脇をつねり上げる。  

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