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第23話
背筋を駆け上がる悪寒に震えながら、「お酒をお持ちしました」と告げる。
蚊の鳴くような声は朱雀の吐き出す荒い息にかき消されてしまうほどだった。
「ああ、こち 」
ゴウの「こちらへ」の言葉が途中で途切れ、慌てたような声が上がる。シオンが何事かと焦って駆け寄ろうとした目の前で、長く美しい黒と赤の髪が乱れる。
「シオン! それを持って出ていけ!」
鼓膜を震わせるのは普段の朱雀のゆったりした声ではなかった。
細く華奢な腕を伸ばしてゴウを抱きしめ、そのピジョンブラッドの瞳を燃やしながらシオンを睨みつけている。
「はは。シオン、それはお前が食え」
「えっ⁉︎ 私は、お酒は……」
チカ と紅の瞳が燃え上がる。
その目の中にあるのは「ゴウに声をかけられた相手」に対する悋気だ。
シオンは体罰を受けた時のように体をびくりと跳ねさせると、膳を持ったままよろめきながら部屋を飛び出してしまう。
普段は聞くことのない、けたたましく扉を閉める音にゴウは苦笑を漏らしながら太い腕を朱雀の腰に回す。商人と名乗るにはあまりにも筋肉質でごつごつとした手が柔らかな脇をくすぐりながら、ゆっくりと薄い腹を撫でていく。
「怖がらせちまって。可哀想に」
「 っ、ぅあ……、可哀想なのは私だっ!」
朱雀が叫ぶと、それに応えるようにポロポロとルビーが滴り落ち、達しすぎて小刻みに震える足を撫でながら床へと積もる。
「も……もうっ、いっぱい 待った!」
ひくりと喉が震え、雫の代わりに再びルビーが肌の上を転がり、カチカチと産声を上げた。
ゴウは宥めるように耳元にキスを落としつつ、優しく指先で唾液と自身の精液に濡れて萎れたような下の毛を弄る。
「あ、……あ、あぁ……」
繰り返し繰り返し、もういいといくら告げてもゴウが愛撫し続けたそこを弄られ、朱雀は苦しげに喘いだ。
焦れきった最奥のさらに奥まで触れて欲しいとねだっても、ゴウは剛直をゆるゆると擦り付けながら朱雀の体を堪能するように触れ続けるだけだった。
「ゴウっ……この、意気地なし!」
「はは、うん。うん。お前に関してはそうだ」
小さな手が縋りつき、欲しいとねだるままに自分の肌に爪痕を残すのを楽しげに見やり、ゴウは寝台へと朱雀を押し倒した。
いつも透けそうなほど白い肌が紅潮して人間らしさを醸し出す。
水揚げから今この瞬間まで、これを見たことがあるのは自分一人だけだという事実が、ゴウの心をくすぐってさらに柔らかくしていく。
「……もう入ると言った。……もう十分ほぐれた…………っ」
朱雀の声は弱々しく、今にも萎れてしまいそうな花のようだった。
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