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第3話 男しかいない世界と聞いた俺

あれから学園を休んで数日かけて俺はこの世界の事を把握した。 この世界にはなんと…なんと…なんと…男しかいなかった…。 何度聞いても男しかいなかった。 何処を見ても男だけだった…。 金持ちの貴族になったのに、メイド服を着た可愛い使用人はいなかった。 あっ、男しかいないという衝撃的事実で忘れていたが確か魔法が使えるらしい。 女は居ないけど魔法はある…なんの慰めにもならない。 魔法って…これはもはや夢でしかないのでは? 夢だろ夢。 俺はきっと地震で駅の階段から落ちた結果、意識不明になったんだろうな。 これは夢なんだ。 絶対に夢だ…男しかいないなんてありえねぇもん。 すげぇリアルな夢だ。 痛みも感じる夢だ。 「…はぁぁぁぁぁぁぁぁ。」 肺にあった全ての酸素を排出した。 金持ちになったんだけどな…。 聞けばグラキエス公爵は貴族社会で王族の次に偉い公爵家で、王子との婚約も幼い頃に決まったとか…。 すんげぇ面倒ななんとか教育を長年やらされた甲斐もあり、金髪野郎…王子よりも断然優秀で王家も安泰だとか囁かれていたらしい。 他力本願…他人任せ…丸投げ…。 一方で完璧すぎるが故に近寄り難く、王子も距離を取っていたと噂されている。 二人の関係を理解している者達は、引き裂くことよりも第二王妃だったり側妃の座を狙っているとか。 公爵家を敵に回すことも避けたいが、婚約者であるアティラン自身が有能なため国に必要な人物だと認識されている。 俺と王子との関係は婚約者となった時から適度な距離だったので、こっそりと王子に取り入ろうとする者は数えきれない程いたそうだ。 だが結婚もしていない二人の邪魔は出来ないと考え、結婚後一年過ぎてから第二王妃・側妃に立候補すると考えた多くの高位貴族のご令息が未だに結婚適齢期にも関わらず婚約者不在であった。 なので多くの夢見る貴族達は王子との距離も近くもなく遠くもない程よい距離を保っていた…。 万が一一線を越え、婚約解消などされては国にとっては一大事だからだ。 それ程アティランという人間は重宝されていた。 親世代だけでなく同年代の貴族達の誰もが理解し、嫉妬するなどという感情は全くなかった。 寧ろ彼には外交や公務の全てを任せ、自分は王妃や側妃の美味しいところを頂こうと誰もがアティランの能力を利用しようと考えていた。 なので、無駄に努力して優秀にならなくても王子の心を射止めたら溺愛され家門の地位が上がるというのが貴族達の思惑だった。 誰も何も言わないが、暗黙の了解で王子とアティランの仲を引き裂く者はいなかった。 お茶会等でも考えの足らない貴族が現れたりすると、優しく丁寧に導かれる。 そうやって上手くやって来た…学園に入学するまでは。 学園入学早々、平民の一人が学園が掲げる「平等」という理念を良いことに王子に近付きアティランとの仲を引き裂いた。 アティラン自体は一切興味もなく相手にしていなかったが、王子の方が入れ込んでしまった。 貴族達が目をギラつかせながら監視していたので、王子は最低限の礼儀すら出来ない人間への対処が分からず、相手のペースに巻き込まれズルズルしているうちに興味を持ってしまったらしい…。 そんな状況に貴族達の困惑の声を聞いたアティランは平民の方には近寄りもしなかったが、王子の方には何度か嗜めていた。 それでも王子は変わることがないどころか、周囲の目も憚ること無く平民との時間を過ごしていくようになった。 まるでアティランに対する当て付けのように。 そして、あの日王子に最後通牒のようにこのまま平民との関係を続けるのか確認していたところ、平民が割り込みなんやかんやで王子が俺を突き飛ばして頭を打って記憶喪失とのり今に至る。 王子との関係をスッキリさせる為にさせた調査報告を聞いたが、俺たちの関係は最悪。解消して問題…ないとは言えないが解消するべき関係だ。 アティランは貴族達に良いように利用されているに過ぎず、飼い殺し…仕事を押し付ける存在として婚約を継続されていた。 王子も最悪だが周囲の貴族も同じくらい最低な人間だと知った。 こんな事実を知ったんだ、まともな親なら王子との婚約解消を選ぶだろうし、そもそも記憶喪失した人間に王妃は無理だ。その原因が王子とあれば俺達の関係は最悪なんてもんじゃないだろう…。 事実を知っただけで、余計に疲れてしまった。 俺は来週から学園に復帰するらしい。 休んでる間やることが無くて暇だったので、学園復帰はいいんだが全く覚えてねぇんだよな。 勉強は一からだし、そもそもやる気がねぇ。 魔法は面白くて練習すると、アティラン自身の能力の高さ故か簡単に成功した。 アティランは水と氷の二属性持ちらしい。 体質によって異なるが、水・火・風・土・氷・雷・光・闇属性があり、基本は一属性だが、魔力量と才能、訓練次第で二属性に増えることも有るんだとか。 アティランは真面目な男だよ。 真面目すぎたから、記憶喪失になんかなったんじゃねぇの?と思ってしまう。 俺はスペックの高く努力を怠らない人間に転生したようだ。 はっきり言ってしまえば、良いとこ取り。 水と氷のニ属性を操る優秀な男かぁ…冷静・冷酷な奴って大抵水か氷だよな。 俺そんな人間じゃねぇんだけど…記憶を失った人間だがら属性も変わってんじゃね? やっぱ魔法と言えば火を出したいんだよなぁ。 血液の流れに乗せ魔力を意識し集中、魔力の終着点を掌に集中させた。 漫画とかでみたような浅い知識を使い、頭の中で確り炎をイメージした。 「来いっ………アハッ」 瞼を開けると掌から炎が上がっていた。 やべっ、楽しいかも。 火だけでなく土に風と雷の発現に成功し、光と闇にも挑戦した。 光と闇については全く反応が無かったが発現した属性については、訓練次第で使いこなせる自信があった。 漫画の中でしか存在しない魔法を目の前にすると、半信半疑と言うか興味がそれ程無かったにも関わらずいつの間にかハマっていた。 休んでいる間はほとんど魔法ばかり訓練と言う名の遊びをしていた。 異世界転生する漫画の奴らが皆、魔法を必死に訓練するのか分かった。 一言でいうなら、おもしれぇ。 遠隔戦は魔法を放てばいいが、接近戦では炎の剣とかだよな。 炎を剣の形にして目標に振り下ろすと切ると同時に切断面から炎が上がっていく。 これを氷や雷でも試すことに成功した。 身体能力が上がればもっと活かせるんだが今はこれが限界だった。 男しかいないと聞いて、その現実を忘れるように魔法に打ち込んだ。

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