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第11話 エストレヤ イグニス
扉に手のひらをかざしロックを解除する。
僕と違って大きくて指が長い綺麗な手。
なんの迷いもなくベッドに下ろされ、グラキエス様に見下ろされていた。
氷の貴公子と呼ばれている、あのグラキエス様が不適な笑みを浮かべていた。
「もう、逃げらんねぇよ」
「ぁっあのっ……んっんむっんぁんっはむっんあんんあむっん」
夢なのに息苦しくなるなんて不思議。
無意識のうちに服を掴み離したくなかった。
目を開けたらグラキエス様はいないかもしれない。
僕は一人ベッドの上で、今までのことは全て僕の願望が見せる夢のようで信じられない。
ボタンがっ…瞼を開ければ何もかも見透かしてしまう蒼い瞳に僕が映った。
外されていくボタンが多くなりシャツが開いてしまうと僕の貧相な身体が晒される。
グラキエス様のように引き締まった身体とは違うし、王子のように逞しい身体でもない。
己の身体が恥ずかしく見られたくなくてシャツを握りしめた。
こんな身体でもグラキエス様は続けてくれるかな?
興味なくしたりしないか不安だった。
僕の態度が悪かったのかグラキエス様に止めるか確認されてしまった。
何度もされると次第に、僕から断るのを待っているのかと思えた。
…けど、僕は止めたくない…。
「止めないで」
すがり付く思いで願った。
「優しくする」
というグラキエス様の言葉と同時に頭を撫でてくれた。
家族以外で初めて撫でられた。
嬉しくて目を瞑ると優しいキスが降ってきた。
僕の手にグラキエス様の手が重なりキスをされた。
まるで王子様みたい。
あのグラキエス様が僕の身体に触れていく。
胸に来た時、心臓が壊れそうなほどドキドキした。
こんなんじゃグラキエス様にもバレちゃう。
それに我慢してるのに勝手に声も出ちゃいそうで怖かった。
この部屋の物は全てグラキエス様の物で枕やクッションを勝手に触ったら嫌がられると思って指を噛んで耐えた。
身体からグラキエス様が離れていくのが分かった。
僕は気持ち良かったけど…きっとグラキエス様にとっては詰まらなかったのかも…。
もう…悲しくて顔をみることが出来ない。
顎を取られグラキエス様の美しい瞳に吸い込まれていれば、手を奪われグラキエス様の唇が触れた。
「傷が付くだろ?噛むな。」
僕の事を心配してくれたの?
そんな人、家族以外居なかったのに…。
目の前のグラキエス様は僕の妄想で理想なんだ。
「…はっはぃ」
ちゅっと軽く唇に触れるだけのキスだった。
「声、恥ずかしいか?」
「…ぅん」
「俺はエストレヤの声、聞きてぇ…イヤか?」
誰も僕の言葉なんて聞いてくれなかったのに、声を聞きたいって言ってくれた。
「…ぇっ…ぁっ…変な声…が…」
嬉しいけど…聞きたいって言ってくれたのに、あんな声は聞いてほしくない。
「変な声?それはエロい声だろ?聞かせろよエストレヤのエロい声。」
こんなこと初めて言われた。
嬉しくて…でもまだ僕にそんな勇気は無い。
「ぇっ…はっはずか…しぃ」
「分かった、けど口を押さえるのはいいが噛むな。噛んだら手を縛るからな。」
人に心配されるなんて…しかもグラキエス様に…この僕が。
一人ぼっちの僕は誰かに気付いて欲しかった…ずっと…。
「…ぇっあっはい」
嬉しくて頷いた。
「言ったな、本気だからな?」
え?
縛るのは大袈裟に言っただけなのでは?
本当には…しないよね?
「あっあのっやっぱり…んっんあむんっんふっんっふぁんああんっあっあっあっ」
言葉の途中だったのに…。
僕の声聞いてくれるって…でも、キスできるなら良いかも…。
首に知らない痛みが走る。
イヤらしい声が出てしまいそうで再び指を「噛んだら手を縛るからな」…先程のグラキエス様の言葉が頭に浮かんだ。
口を開け噛む直前に思い出し手を握りしめ耐えた。
「惜しいな、もう少しで手を縛れたのに。」
耳元で色っぽく囁かれた。
僕はグラキエス様にこんなことを求めていたの?
「…や、やさしくしてくれるんじゃ…」
僕も精一杯イジワルな言葉を使った。
「そうだな…エストレヤが可愛すぎてつい…あんま可愛いことすんなよ。」
か、可愛い?
そんなの子供の頃に言われて以来で、何がグラキエス様に引っ掛かったのか予想できなかった。
「ぇっ?ぁっわかんっひゃっ……ぁっ」
ぎゅっと抱き締められたと思えば持ち上げられ…シャツが…。
僕の身体を隠してくれるものが失くなってしまった。
腕でなんとか、その…見えないようにした。
「綺麗な身体…誰にも見せたことないだろ?」
あのグラキエス様に綺麗な身体って言われた。
同学年の中でも小さくてなんの取り柄もない僕が綺麗だって…。
こんな身体見られたくなくて、いつも隠れてた。
誰も僕なんて気にもしてないのに…グラキエス様だけは僕を見てくれる。
「…ぅ、うん」
「これからも、そうしろよ」
「…んっ」
今も恥ずかしいけど、どこかグラキエス様には見て欲しい。
だけど自分から身体を隠す両手を退ける勇気がなかった。
それを汲み取ってくれたのか、グラキエス様が腕を誘導してくれた。
「腕はここ」
「……はっぃ」
おかしな事に僕はグラキエス様の頭頂部を見下ろしていた。
僕はあのグラキエス様とエッチな事をしてるんだよね?
夫婦や婚約者、恋人としかしない行為。
僕がこんなことをしちゃうなんて…夢って凄い。
気持ちいいのが本当みたいなんだもん。
心が満たされると身体も気持ちいいのかも。
「ゃっんっぁっんっぁあっんっ」
誰かに胸を間近で見られたことなんてないし、触られたことも…。
気持ち良すぎてグラキエス様の頭を抱き締めていた。
僕…今、凄く大胆なことしてる…けど止められない。
片方はしゃぶられもう片方は摘ままれている、あのグラキエス様に。
自分でもこんなに触ったことなんて無いのに。
グラキエス様はどうしてこんなに僕の気持ちいいとこを知ってるの?
だけどもう、耐えられそうにない…アレが…。
こういう時、やめてって言っていいのかな?
だけどこれ以上は…もぅ…。
「ねっ…もぅ…胸だめぇんっん」
「…悪ぃ可愛くて、ついなっ」
可愛い?
僕のが?
「っんあむっんっんっふっんあっんあむっむっん」
顔が近づいたと思ったらキスされてた。
「やり過ぎた…痛かったか?」
本当の事言って良いのかな?
「はぁはぁ……ちょっと…だ…け、ヒリヒリ…する。」
「美味しくて、加減ができなかった。」
「美味しい?」
夢の中のグラキエス様は良く分からない。
美味しいって僕の胸は何も…。
「あぁお前の胸、旨くて口が離れられなかった。」
グラキエス様が嘘を言うとは思ってないけど…美味しいや可愛いは信じられない。
「…ぇっ?ん?」
「この胸、他の奴に触らせんなよ。」
僕の身体に触りたがる人なんて居ないのに…。
僕って誰かに束縛されたい願望があるのかな?
「ぅん」
「なら、今日はこれだけ。」
え?
これ…だ…け…やっぱり言わなきゃ良かった…。
もしかして僕の身体が詰まらなかったのかな…。
いくら僕の夢だったとしても都合が良すぎだよね…。
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