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第20話 理性ってあるもんだな
両親から手紙の返事が来た。
婚約話は進めておく。
一度連休に帰ってきなさい。
とっても簡潔な返事が。
これで中途半端な状態ではなく、正式にエストレヤを俺のモノ…婚約者に出来る。
人をモノ扱いしたくないが、エストレヤは俺のだ。
誰にも奪われたくない。
「次の連休って二週間後かぁ…。」
連休にエストレヤを抱けないのは辛いが「婚約者」になってしまえば誰も俺からエストレヤを奪うことはできない。
あれだけ分かりやすく牽制はするも何処か不安があった。
エロ過ぎるエストレヤに興味を引かれ目をつけた野郎も何人か確認した。
俺の牽制が逆効果を生んでしまっていたのは誤算だった。
早くしないと婚約志願者が出てくる可能性があると内心焦っている。
昨日届いていた手紙をエストレヤが起きる前に確認していた。
エストレヤはまだ深い眠りについている。
魔物とエッチで夕食も食べずに眠り続けている。
細ぇのに一食抜かすとか…。
「ごめんな」
眠るエストレヤを優しく頭を撫でた。
俺はエストレヤにとって悪影響なのか?
大事にしてやりてぇのに…。
「無理させたい訳じゃないんだけどな…。」
頬を撫で唇に軽くキスをした。
今日は全く起きないな。
朝食食いに行くには起こさないといけないが寝かせてやりたい。
今後は少し我慢した方がいいよな…。
「んん゛ん゛ふぅん」
起きたのか?
「んにゃぁっ」
やっぱこいつ可愛いよな。
男で「んにゃぁっ」って言って気持ち悪くねぇとか…俺は相当エストレヤに溺れてんのか?
「おはよっ」
「…ぉっおはようございます。」
「起きれるか?」
「はっ…ぃ」
「無理すんな。」
「だぃじょっぶ。」
大丈夫じゃないのに大丈夫って言うよな…。
手を貸して起き上がるのを手伝った。
「痛いのは腰か?それとも尻?」
「……りょっほぅ。」
うつむき加減で答えるエストレヤを見て、押し倒したいと思う俺が悪いのか?
エストレヤと対面するように、ベッドに腰かけた。
「授業出れるか?」
「出ます。」
「…真面目だな。」
休むって言葉をほんの少し期待した。
身体が痛ぇのに…エストレヤが休むって言ったら当然俺も一緒にいる予定だったのに…。
まぁ、分かってたけどな…。
エストレヤの細い肩に軽くキスをした。
「…朝食行けるか?」
「はぃっ……ぁっ」
裸だと気付き布団で身体を隠すが今では本人より俺のがエストレヤの身体に詳しいと言える。
隠されると強引にでも暴きたくなる感情をエストレヤは知らないんだな。
俺の服をエストレヤに渡し、背を向けた。
エストレヤの為でなく、俺がエストレヤを襲わないために…。
ごそごそと服を着る音に、耳をそば立ててしまうのは許して欲しい。
エストレヤはベッドから降り、立とうとするもふらついてしまい咄嗟に支えるも、それ程激しくしてしまったことに反省した。
大抵足腰が立たないのは初めての翌日で二回目以降は次第に慣れていくものなので、何度も経験しているのにふらつくのは…俺が原因だろうな。
「食堂行けるか?」
「…行きます。」
「行けます。」ではなく「行きます。」は根性で行きますに聞こえる。
体調面は満身創痍ではあるが「気合い」で乗り切るのか、俺に気を使っているからか、無理をしているのは確実だった。
「ここで食うか?」
「ぅんん…大丈夫です…行きます。」
根性があるというより、頑張り屋だよな。
俺が気を使って我慢するべきなんだよな…。
「ひゃっ」
抱き上げて部屋を出て食堂を目指す。
今日はなにも言わなくても俺の首に腕を回した。
「ぁっあの…グラキアス様?僕…平気だよ?」
「歩けんのか?」
「歩けます。」
必死に俺に訴えるが信用できなかった。
「立つだけでフラついてたのにか?」
「今はもう平気です。」
「俺がしたいんだよ…させろ。」
「…はぃ。」
俺がしたいと言えば、エストレヤは俺の願いを叶えてくれる。
食堂までの道すがら多くの生徒の目に触れた。
最近では緩んでいたのに再び強烈な視線となった。
俺は気にする事なく食堂のいつもの席にエストレヤを座らせ、離れる時は必ずキスをして、エストレヤを補充していたが今日から…今から我慢を覚えることにした。
二人分の朝食を取りに行く間、誰かに声をかけられるも「あぁ」とだけ答え、エストレヤの元へ向かった。
小さくなって待つ姿はいじらしく、庇護欲を掻き立てられ抱きしめてキスしたいと俺を唆す。
しばらくの間、禁欲する事を…決めたくはないが覚悟した。
エストレヤの…体力が戻るまでだ。
「はぁ…キスしてぇ。」
「ふぅへ?」
「…何でもねぇよ。」
頭を撫でたくなったが、一度触れるとキスして服の上からでも摘まみたくなる。
無防備な顔を惜しげもなく晒すエストレヤに、理性で堪えた。
俺にも僅かながら理性というものが残っていた…今まで存在すら知らなかったわ。
婚約が決まるまでは耐えるしかねぇ…俺の理性ぶっ壊れねぇと良いな。
朝食を終え自らの足で立とうとするエストレヤを再び抱き抱えた。
昨日の魔物騒動から抱き抱えていたので、足でも怪我したのだろうと周囲は思い込んでいた…思い込もうとしていた。
部屋に戻り二人きりになっても押し倒すのを歯を食いしばって耐えた。
これ…理性ぶっ壊れた後ヤベぇかも…。
小出しにエストレヤを抱いていかないと我慢した分反動できっとエストレヤの身体を壊しそうだ。
ただでさえ今もエストレヤの身体は壊れる寸前だというのに…。
エストレヤ頼む、今すぐにでも回復してくれ。
これは俺の為でありエストレヤの為でもある。
この世界は魔法が使えるんだろ?回復魔法って無ぇのかよ?
隙有らばエストレヤの身体の事を思い出してしまうので、勉強して煩悩を振り払うしかないな。
だぼだぼの俺の服を脱ぎ制服に着替える姿を偶然見てしまえば、ゆっくり大きく深呼吸をした。
俺は今、試されてるのか?
神にか?エストレヤにか?
どっちにしろすげぇ試練だわ。
鞄は…あっ教室だわ。
昨日教室に戻らず部屋に直行したから持って帰ってくるの忘れたな…それはエストレヤもか。
必要な教科書を適当な袋に入れ、エストレヤの部屋にも向かい同じようにした。
移動は言うまでもなく俺がエストレヤを抱き抱え、慣れたようにエストレヤの教室に入り席に座らせ教科書を渡した。
離れる時キスをしようと顔を近付けてしまったが、寸前で我慢できた。
「放課後も来るから待ってろよ。」
それだけ言って、俺は自身のクラスに向かった。
長居するのは危険だ。
禁欲して、まだ一時間も経ってないのに禁断症状が現れ出した。
禁欲する気もなくキスやエッチが出来ないのはなんとも思わないが「禁欲する。」と決めた途端、頭の中がその事に支配され、たったの一時間が地獄のように長かった。
クラスに入るとオプなんとかや色んな奴が昨日の事で盛り上がり、話しかけてきた。
全く耳に入らず「あぁ」だけ言い残し席についた。
婚約…出来なかったら俺は犯罪者確定だろうな。
なんでこんなにエストレヤを求めちまうんだろう?
もしかして、本物のグラキエスはエストレヤが気になっていたのか?
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