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第81話 俺達は遂にキスが出来る…のか? ラーデン ティエンダ
いつの間にか時間は過ぎ、フロイントと手を繋いで登校していた。
婚約者解消は確かに年に数組は存在する。
家門の経営状況であったり、本人の素行であったり、婚約者以外の相手を本気で愛してしまったりと理由は様々である。
それらは俺達に無縁のものと深く考えたことはなかったが、俺達の知らないところで婚約解消を企む者の存在を知った。
何の得になるのか分からないが婚約者達を引き裂く存在。
俺達はこれからもっと婚約者らしく深まる事を選んだが、もし動いてなかったら…。
あの時グラキエスに相談していなかったら俺達も…。
グラキエスと知り合えたことで俺達の婚約者人生を救ってくれた。
グラキエスには感謝しかない。
「あっ」
「すまん。」
教室の前に来た途端、離れたくないという思いが強まりフロイントの手を強く握ってしまった。
「フロイント…」
「はい」
「今日も部屋に行って良いか?」
「はい」
「キスをしよう。」
「…っ…はぃ。」
「…昼も一緒に…出来るか?」
「…はぃ。」
「じゃ、昼に。」
「はぃ…お昼に…。」
俺達は別々の教室に入っていった。
俺達は今日キスをする。
キスをする、キスをする、キスをする、キスをする、キスをする、キスをする、キスをする。
俺の頭にはその言葉しかなく、昼になるとフロイントの教室へと心が急いていた。
俺とフロイントの教室の中間地点で落ち合い、手を差し出すと重ねられ言葉を発すること無く手を繋ぐことが出来た。
おっ、今のは婚約者っぽいのでは?
少しだけグラキエス達のような婚約者になれた気がした。
「フロイント席を頼…む?」
「ティエンダ様?」
「グラキエス達が来た。」
食堂の入口付近でグラキエスとイグニス様を目撃した。
「イグニス様と待っていてくれ。」
「はぃ」
俺はグラキエスと共に二人分の食事を取りにいった。
その際、教室でイグニス様が男爵家の令息に絡まれていた事をグラキエスから聞かされた。
男爵の彼はグラキエスとイグニス様を別れさせ、自分がグラキエスと婚約を希望していたらしい。
彼が依然、子爵家の令息と恋愛において揉め事を起こしていたのは多くの人間が知っていることだった。
そんな彼が次に選んだのがグラキエスだなんて、自暴自棄にも程がある。
グラキエスは誰が見てもイグニス様を愛している。
イグニス様以外を愛すなんて想像できない程にだ。
そんな二人を別れさせるなんて無謀でしかない。
学園にはいろんな人間がいるとはいえ、なぜ婚約者のいる人間に近づくんだ?
婚約していない貴族は多くはないが、居ないこともない。
例え魅力的な人間であっても、相手に婚約者がいるのなら諦めるべきだ。
自身の感情を優先した結果、人生を犠牲にするのは本人だけじゃなくなる。
そんなこと分かりきってるだろうに…なぜ彼らは他人の婚約者を欲しがるんだ?
理解できないし、そんな彼らに巻き込まれたくない。
そんな事をひたすら考えていた。
食事を終え四人で中庭に移動し、グラキエス達のキスを盗み見していた。
会話の合間にするキスから深く絡むキス。
こんなキスを俺達も「今日」するんだ。
気合いが入るとフロイントを支えるという名目の手に力が入り、フロイントも俺の制服を確り握りしめていた。
昼休みが終わり教室に戻る時も、グラキエスの後ろを歩きながら二人を観察していた。
グラキエスはイグニス様の腰に手を回し、自身の身体に引き寄せているように見えた。
イグニス様が見上げるとグラキエスの顔が近づき二人はキスしていた。
廊下で歩きながらキスをする。
難易度が高すぎる。
俺にも出来るのか不安でフロイントに視線を向けた。
「部屋で…しましょっ。」
「あぁ」
何を?と聞かずとも何の事か分かった。
きっとフロイントも俺と同じことを考えていたのだろう。
午後の授業も真面目に受けながらも頭の三割ではフロイントの部屋で行われる「キス」について考えていた。
放課後のダンスでもフロイントと視線を合わせていたつもりだったが、唇に目がいっていた。
キスの事ばかり考えているとダンスもスムーズに終えることが出来た。
グラキエスとイグニス様は同じ階でも部屋は遠く離れ、別の階段を使った方が良いんだが…以前グラキエスの部屋にいると言っていたのは事実なのだろう。
今ならその気持ちも分かる。
俺もフロイントと別れるのが嫌だった。
常に…とは言わないが、まだ一緒にいたかった。
グラキエスとイグニス様と分かれた後は、自身の部屋に寄ること無くフロイントの部屋へと向かっていた。
フロイントの部屋に入ればキスすることが許される。
俺は今日キスする為にフロイントの部屋に来た。
フロイントも俺の気持ちは伝えてある。
部屋に踏み入れることが許されたと言うことは、キスする事を許されたと言うことだ。
昨日から何度も確認した。
俺だけではなく、フロイントにも俺とのキスを意識して欲しかった。
ソファに隣同士に座れば緊張する。
深呼吸のつもりが鼻息が荒くなってしまう。
何度も落ち着かせようと目を閉じ深呼吸に集中するも、フロイントを見てしまうと心拍数が上がり鼻息が荒くなる。
それでもいつまでも深呼吸を繰り返しているわけにはいかない。
俺は今日フロイントとキスをするんだ。
「フロイント」
「はぃ」
「キスをしよう。」
「…はぃ」
俺達は向き合い、フロイントの両肩に触れ距離を縮めていく。
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