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第82話 遂に ラーデン ティエンダ

フロイントが瞳を閉じたので俺も閉じ、互いの体温を感じながら唇が触れた。 触れた後は勢い良く離れた。 時間にしたら一秒も無かったが確りと感触は残っている。 俺達はキスをした。 呼吸を荒くしながらゆっくり瞼を開けた。 フロイントと目が会うも、視線を逸らされてしまった。 「…嫌…だったか?」 俺だけが舞い上がり、血の気が引くのが分かる。 「そっそんなことは…」 「………」 「キスが嫌だったんじゃなくて…恥ずかしくて…。」 「俺とのキスは恥ずかしい?」 「ちっ違うのっ、キスが出来て嬉しくて…ティエンダ様の顔を見ることが出来ないんです…。」 顔を真っ赤にさせながら告げるフロイントに興奮してしまい、なんだが身体中が暑くて堪らない。 「俺もフロイントとキスが出来て最高に嬉しいっ、出来ることならまたしたい。」 「…僕も…です。」 「いいのかっ。」 「…はぃ」 「フロイント」 背けられていた顔から、視線を合わせ瞼が閉じられたので唇を押し当てた。 再び離れ、フロイントの反応を確認した。 照れながらも俺を見てくれた。 「また…しても良いか?」 「ぅん」 小さく頷いたのを確認し、再び唇が触れた。 一秒にも満たないキスをして勢い良く離れる。 また唇に触れたくなり確認してから再びキスをすることを何度も繰り返した。 今日一日で何度もキスをした。 一秒のキスを何度も何度も何度も。 繰り返していると、いつの間にかかなりの時間が過ぎていた。 離れたくない。 フロイントの部屋に来てからその思いは強くなった。 一昨日よりも昨日のが離れがたく、今日は昨日より離れたくなくなった。 俺もフロイントとずっと一緒にいたい…。 部屋に入ることの許可が降りたばかりなのに、泊まらせてくれ等と図々しいことは言えなかった。 俺なりに努力し昨日より少しだけ長く、フロイントの部屋に居続けた。 それでも帰る時間は訪れてしまった。 帰りたくはないが、フロイントに迷惑はかけられず扉まで歩き出した。 この部屋から出たくない、フロイントと側にいたいと思うと再び唇に触れたくなった。 「フロイント」 「はぃ」 「部屋を出る前に…もう一度キスをしても良いだろうか?」 「はぃ、僕も同じことを思っていました。」 同じこととは「キスをしたい」と言うことだよな? フロイントも俺とのキスを望んでくれたと言うことだよな? フロイントの両肩に触れ唇を近づけた。 勇気を振り絞り今回は、一秒長く唇に触れていた。 突き飛ばされるのが怖くてそれ以上長くすることは出来なかったが、俺には充分すぎた。 部屋を出て扉の音が聞こえるまで振り向かないつもりでいたが、何時まで経っても聞こえなかったので振り返ってしまった。 扉は開いたままフロイントの姿があった。 手で合図すると彼からも手を振り返された。 名残惜しくも向き直り自身の部屋を目指した。 長い道のりを一人歩き続け、部屋のソファに身を沈めれば先程の夢のような時間を思い出した。 「これが婚約者なのか…。」 婚約者と言うものはこれほどまで幸せなことだったんだな。 目を閉じるとフロイントの唇の柔らかさが甦る。 「明日もキス出来るだろうか…。」

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