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第129話 エストレヤ イグニス
いつも通り変わらない日だったのに、なんだか廊下が騒がしくなりだした。
何かあったのかな?
「イグニス様っ。」
「………」
突然教室に入ってきた見知らぬ彼に名前を呼ばれた。
彼の顔色はとても悪く、不吉なことを連想した。
僕の頭を過ったのはアティだった。
「イグニス様っ少々…よろしいでしょうか?」
突然現れた彼の言葉を疑うこと無く、なにも聞かずに立ち上がり着いていった。
不安が的中していくように有る場所に近付いていく。
彼を疑い名前や今からいく場所を尋ねるべきなのに、怖くてできなかった。
着いた先は…保健室。
不安が僕を支配する。
扉に近付き手を伸ばすと、騎士の方が扉を守り入れてはもらえなかった。
学園内に騎士がいるのはとても珍しく、嫌な方向へと考えが及ぶ。
「ぁっあの…」
扉を守っている騎士の人に視線で尋ねた。
僕よりも…アティよりも大きくて、凛々しい顔の人に真正面から向き合った。
以前の僕なら考えられなかった。
だけどアティの為なら強くなれる。
「誰も入室は許可されていません。」
「…中にいるのは誰ですか?」
「…お教えできません。」
騎士の人は中の事を一切教えてはくれなかった。
「イグニス様。」
僕をここまでつれてきてくれた人に呼ばれた。
「あの…中にグラキエス様がいるはずです。階段から転落し廊下に倒れているところを発見しました。」
「アティが転落?アティはアティは無事ですか?」
「それは…僕にも…グラキエス様が手当てを受けている間にイグニス様を呼びに行ったので…。」
「そうだったんですね…ありがとうございます。」
態々僕の為に呼びに来てくれて人に対し責めるように詰め寄ってしまった。
「いえ…。」
「中にはアティと先生が?」
「…はぃ…あと…アフェーレ王子も一緒かと…。」
「………」
王子?
王子がどうして一緒なの?
なんで?
偶然?たまたま?
まさか…アティの記憶が戻って…。
「やだ…アティ…アティ…アティ」
「お下がりください、貴方を入れるわけにはいきません。」
扉に近付いても騎士に止められ開けることは叶わなかった。
「アティ…アティ…アティ…」
このままだとアティがいなくなっちゃう…やだ…僕を一人にしないで…。
アティ…アティ…。
扉の前で縋り付き幼い子供のように泣いてしまった。
それでも扉が開くことはなかった。
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