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第147話 結婚した
卒業パーティーを終え数日後には俺達の結婚式となった。
人は別に呼ばなくてもよかったのだが、貴族は今後の関係を意味するので爵位が高ければ高いほど多くの貴族を招くようだった。
俺は この国では聞き慣れない結婚指輪を用意した。
パーティーや茶会で人に会う時だけ身に付ける豪華な指輪ではなく、過度な装飾の無い常に身に付けるシンプルなものを。
一見なんの飾りもないものだが、指輪の内側に挙式日と互いの瞳の色の宝石を埋め込んだ。
大抵貴族の式は入籍するためのサインを互いにした後、司祭の承認を得て軽くキスをして終わりとなる。
だが日本の結婚式の常識がある俺には、指輪の交換がないのか物足りなかった。
なのでサインの後にエストレヤに内緒で指輪を用意した。
前例の無い指輪交換に出席者達は身を乗り出して観察していた。
俺は小さい方の指輪を手に取りエストレヤに渡した。
「指輪の内側を見て。」
「数字…今日の日付?」
「あぁ、それと」
「A to E?」
「アティランからエストレヤへ」
「アレキサンドライト?」
「あぁ、俺の色。指輪を良いか?」
「はい」
エストレヤから指輪を受け取った。
「エストレヤ、左手を良いか?」
「…はぃ」
差し出した俺の手にエストレヤは左手を重ねる。
この国には相手に指輪を嵌めるという事はしない。
指輪は自分でつけるものだったので、次の俺の行動は誰にも予測つかなかった。
俺は日本の仕来たり通り、エストレヤの左手の薬指に指輪を嵌めた。
エストレヤの手を握ったまま誓いを求めた。
「エストレヤ、これから何があろうと俺の事を思いながらその指輪にキスすることを誓うか?」
俺の突然の行動に困惑した表情を見せるも、次の瞬間には瞳を潤ませ満面の笑みだった。
「はいっ…誓いますぅっ…ぅっ…」
「泣くなよ…俺にもしてくれるか?」
「んっ」
エストレヤは残されたもうひとつの指輪を取り内側を確認した。
「今日の日付にE to Aそれに、宝石はアレキサンドライト?」
「あぁ、夜と昼で色が変わるアレキサンドライトは俺とエストレヤの色だと思わないか?」
「ぅん」
「俺の指に嵌めてくれるか?」
「んっ」
エストレヤは俺の左手薬指に指輪を嵌めていく。
「アティ…アティラン…毎日僕の事を思ってキスしてくれますか?」
先程の俺のように誓いを求めた…正式な場だったのでアティランと呼んだのだろうが、アティで良かったんだけどな。
それに、俺と同じように言いたかったんだろうが突然だったからエストレヤ流の言葉になったのがよかった。
「指輪」という言葉が抜けていたので当然次のようになる。
「…ふっ…あぁ、毎日キスする。」
エストレヤの腰を抱き寄せ顎を取り唇を重ねた。
神への誓いにしては長く激しくエロいキスを続けた。
「長いっ」
最前列にいたオッサンの声が響き渡り、漸く俺達の唇が…離れなかった。
観念し離れそうになるも離れず気が済むまでキスをした。
唇が離れ会場を見渡すと大きな拍手で祝福された。
その後出席者全員と挨拶を交わすも、ほぼ全ての人間が指輪について触れてきた。
面倒だったが何度も同じ説明をした。
見た目は何もないシンプルな指輪だが、内側に記念日と俺とエストレヤだと分かるように彫ってありお互いの色の宝石を埋め込んであると。
この指輪は結婚期間中は基本外す事がない。
いついかなる時も相手を忘れないという意味が込められていると。
そして重要なのは、内側は他人には見せない二人だけのものだと話した。
それだけで大いに盛り上がっていた。
貴族が見た目なんの宝石のついてない指輪をすることはない。
だが、高位貴族の頂点に立つ公爵家と侯爵家の結婚にそんな指輪をしたら話題になら無い訳がなかった。
そして、指輪の内側は二人だけの秘密と話せば一気にボルテージは上がる。
ロマンティック過ぎる結婚式は今後行う婚約者達の結婚式の見本となり、俺が依頼した指輪職人は、これから結婚式を行う貴族達に有名な職人として知れ渡った。
学園の頃から俺達を知っている者達から、この国で一番幸せな妻はエストレヤだと言われるようになった。
それは王子が結婚しても続いた。
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