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第3話
ダリウスのお陰で、悪役令息への道は最短距離を行くことができたと思う。
そしてそんな問題児扱いの俺に、両親は「やるならバレないようにうまくやれ」などという注意しかしない、最低な大人のままだった。
しかし、みんな俺から順調に離れていく中、ダリウスだけはべったりな子分で居続けた。
そこでダリウスの扱いに困った俺は、アカデミーに入る前、タイミングよく現れた黒猫に相談したのである。
「第三王子デスカ? モウトックニ暗殺サレテイルハズデスガ……」
俺の話を聞いた黒猫は、そう言った。
暗殺? ダリウスが?
ではダリウスが生き延びている時点で、今後の展開が変わる可能性がある、ということか?
そして俺と黒猫が首を傾げている時に、当の本人がその場に乱入してきた。
「ジョアン、誰と話している?」
「ダリウス」
なんとか誤魔化そうとしたが、ダリウスは誤魔化されてくれなかった。
「その黒猫、ジョアンのものじゃないなら貰っていいよな?」
ダリウスは何を思ったのか、黒猫を魔法で拘束し、その首を掻っ切ると冷たい声で宣言した。
「タ、助ケテクダサイイイ……ッッ」
結局黒猫はダリウスに、俺がこの世界の人間ではなくいつか元の世界に戻るということ、悪役令息という役目を担っていること、そして将来は処刑される運命であることをペラペラと話す羽目になった。
黒猫の話を聞いたダリウスは、鼻で嗤う。
「悪役令息? ジョアンの性格では無理だ。優しすぎるだろ」
「確カニ人選ミスヲシタコトハ、否マセンガ……」
おい。
お前が勝手にミスったんだろ。
俺は完璧に悪役令息の道を辿れているはずだ。
実際にやったのはみんな、ダリウスだけど。
「ジョアン、そんなことはせずに、このままこの世界に留まればいいじゃないか」
「勝手なことを言わないでくれ。ここは私の生きる世界ではない」
プイとそっぽを向く俺の態度にダリウスは眉を顰め、今度は黒猫に話を振った。
「ジョアンがこの世界に留まるパターンはあるのか?」
「エエ、処刑サレナケレバ、ソウナリマスネ。異世界ノ誰カト結バレテモ戻レナクナリマス」
「ダリウス、私は女性という性別が存在する、元の世界に戻りたいんだ……!」
俺は、豊かな胸がありペニスがない性別が元の世界には存在することを切々と訴え、だから協力してくれとダリウスに頼み込んだ。
親の借金さえなければ、彼女とかができて家庭を持って子供ができて……少しは楽しい人生が歩めるようになるかもしれない。
「俺はてっきり、ジョアンはアセクシャルなのかと思っていた」
「いや、|この世界の人間《おとこ》に対して、そういう気分になれないだけだ」
「それは、俺も含まれるのか?」
「当たり前だ。ダリウスのことは、人としては好きだよ。しかし、恋愛感情や性的な意味では、私は誰のことも好きになれない」
「それは……難しいな……」
ダリウスは少し考える素振りをしたものの、概ね俺や黒猫の話を信じてくれたようだった。
「それよりダリウス、今まで誰かに襲われて死にそうな目に遭ったことがあるのか?」
「ああ……暗殺の話か?」
俺は、ダリウスが今まで五度も暗殺未遂に遭っていたことを聞いて、驚いた。
「なんでその時に言わなかったんだ。私の屋敷で匿うくらいはできたのかもしれないのに」
「ジョアンを危険な目に遭わせるわけにはいかないからな。命の恩人だし」
「私が、ダリウスの命の恩人?」
聞けば、俺と一緒にやった木登りや追いかけっこ、かくれんぼの経験が追手を巻くのに役に立ったらしい。水遊びで泳げるようになっていたから川に突き落とされても平気だったし、チャンバラをしていたから剣も振れるようになっていた。
文字を読めるようになったお陰でダリウス最大の強みである魔法の習得が可能となり、今では簡単に暗殺者を撃退できるようになったという。
「アカデミーに入ったら、主人公が現れる。私はその主人公を虐めなくてはならず、いずれは処刑される身だ。だから、今後は私に構ってはいけないよ」
「嫌だ、と言ったら?」
「……絶交だ」
「それは、困るな」
ダリウスは笑いながら、「こいつにはもっと聞きたいことがある」と言って、黒猫を拘束したまま姿を消した。
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