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第2話
男はコーヒーのカップを一度ベンチに置き、左手を支えにしてゆっくりと立ち上がった。
もう一度カップを左手に取り、一歩足を踏み出す。
どうやら体が不自由な様で、右足は殆ど上がらず、引きずったままだ。
「見苦しくてすみません」
男は申し訳なさそうに笑う。
「そんなことないですよ、コーヒー持ちましょうか?」
「お願いします」
受け取ったカップを、車のドリンクホルダーに入れ、男がスムーズに座れる様、サポートする。
扉を閉めてから、運転席に乗り込み、エンジンをかけ、暖房の風量をマックスまで上げた。
「寒くないですか?」
たずねると男はこちらの手を取り、膝に掛けていたブランケットに触れさせる。
「あったかい」
「モバイルバッテリーで動く、電気毛布です」
男は自慢げに答えた。
「へぇ、そんなものが」
「便利な時代です」
しばらく車を走らせた後、男が自ら言葉を発した。
「あの、よければお名前を。私は藤浪と言います」
「あ、俺は多川理翔(たがわ りと)って言います。コーヒーの焙煎所経営してて、たまにキッチンカー出してます……これ、名刺です」
ダッシュボードの中から名刺を一枚取り出し、藤浪さんに渡す。
「ありがとうございます」
「コーヒー、どうでした?車で売るのは、わりと万人受けするものにしてるんですけど」
「美味しかったです。久しぶりに、本格的な味のものを飲みました。1人だと、どうしても簡単に淹れられる粉末のインスタントが多くて」
「来年もあの場所で車出す予定があるので、よかったら贔屓にしてください」
「はい、楽しみにしてます」
車を走らせて40分ほどで藤浪さんの自宅に到着した。自宅は一軒家で、家族と住んでいるのだろうか。
「多川さん」
「はい」
「よかったら、一緒に夕食どうですか?送っていただいたお礼です」
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