5 / 23
第5話
ピーンポーン。キヨさんの家のチャイムを鳴らす。返事がない。どうしたんだろうか。今日はキヨさんに、先輩からもらった去年の講義のノートを写させる約束をしていた。お互い、毎週月曜日が午後の一コマしかなかったため、都合が良いとこの日にしたのだ。ガチャリとドアが空いた。「はーい。どちらさまですか。」出てきたのfat catのボーカルのハルだった。いつもステージの姿と違い、セットされていない髪や、気怠そうな雰囲気、なによりキヨさんのTシャツ を着て、出迎えてきた。俺はびっくりして黙っていると、
「お前か、キヨの周りをウロチョロしてる奴は?」ハルは敵意剥き出しで俺を睨む。
「キヨさんとはいつも仲良くさせてもらってます。今日はキヨさんにノートを写させる約束をしてて、来ました。」
ハルは俺の手元をみて
「キヨは疲れて寝てるから、すぐには出れない。そのノートは俺が渡しておくから帰っていいよ。」と言ってきた。
俺にはハルが出てきただけでも衝撃的だったのに、そのハルに敵意剥き出しでこられて、引き下がるしかなかった。
「じゃあ、お願いします。」
帰り道、さっきのことをグルグル繰り返す。ハルの匂いはキヨさんから香るシャンプーの匂いだった。それに、ハルのあの敵意。2人は付き合っているのだろうか。いや、なんでこんなこと考えるんだ。俺には関係ないだろう。もう考えたくなくて俺はイヤフォンをつけて音楽を流す。流れたのはfat catの曲だった。いつもはfat catの曲を聴くと心が弾むのに、今は心が沈んでいくだけだった。
ともだちにシェアしよう!

