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第12話
その話を晴彦さんにすると晴彦さんは苦虫を噛み潰したような顔をしながら言う。
「お前の鈍感さには、小野寺に同情するわ。あと、降った相手にそんなん話す無神経さも。」
だって、しょうがないじゃないか。俺がこんなこと話させるのは晴彦さんだけなのだ。晴彦さんはめんどくさそうにしながらもアドバイスをくれた。
「キヨは、小野寺のこと、どう思ってるのか考えれば。」
俺が小野寺さんをどう思ってるのか。確かに考えたことがなかったかもしれない。小野寺さんは、イケメンで優しくて神様みたいな存在。俺たちのバンドを救ってくれたファン。リア充のコミュ力お化け。色々、考えたけど、どれもしっくりこない。てかなんで俺、小野寺さんのこと、こんなに気になるし、連絡したいと思うのかな。小野寺さんの好きになっちゃたんです。という言葉を思いだす。徐々に顔が熱を持ち出す。え、嘘、俺、小野寺さんのこと好きじゃん。ライブハウスに人がいっぱいでも小野寺さんを見つけられるのも、小野寺さんに全て話せてしまったのも、俺が小野寺さんを好きだからということで納得がいく。自覚した途端に自分のとった大胆な行動を思い出して、恥ずかしい。小野寺さんもこんな気持ちだったのだろうか。
恋を自覚ししから、俺も小野寺さんに全く連絡がとれなくってしまって、気まずい関係が続いてる。そんなことをメンバーは最初は面白がって、揶揄ってきたりもしたが今では、俺が話始めるとうるさいと言って、他ごとをしてしまう始末だ。
今日はライブで休日だから、人入りがいい。でも、俺はすぐに小野寺さんを見つけてしまう。本当に小野寺さんが好きなんだと感じて、恥ずかしい。そう思いながらも、2人と音をならすと、そんな感情はどこかへ行って、音を掻き鳴らす。2人とやる音楽はやっぱり最高だ。
ライブが終わった後、物販販売をする。小野寺さんはいつものように真矢さんから物販を買おうとする。俺も小野寺さんの顔をまともに見れないからありがたい。
「俺の売ってる物販はもう完売したんだ。」
真也さんが耳を疑うようなことをいう。見るとまだ物販は山積みに積まれている。何を言い出すんだこの人は。
「え、でもたくさんありますよね。」
小野寺さんは戸惑い気味に尋ねる。でも真矢さんは頑なに、ない。としか言わない。さらには、
「俺のは、売れたから、キヨから買ってくれ。」なんて言い出した。それは困るからやめて欲しい。仕方なく、小野寺さんは1番長い列の晴彦さんの列に並んで、物販を買おうとする。でも、列の先頭にきた小野寺さんを見ると晴彦さんは「俺のも、売れたからキヨのとこ行って。」と、小野寺さんに物販をしなかった。何考えてるのこの2人。俺と小野寺さんが気まずいの知ってるでしょ。小野寺さんは今日、限定のステッカーを諦めきれず、気まずそうに俺のところに来た。面と向かって話すのは、1ヶ月ぶりである。「えと、このステッカーください。」目が合わないまま会話を続ける。「ありがとうございます。500円になります。」そのまま小野寺さんが帰ろうとすると、晴彦さんが小野寺さんに声をかける。「今日の打ち上げこいよ。」小野寺さんは晴彦さんをライバル視してたけど、好きなバンドのメンバーに誘われて断れるファンなんているはずもなく、俺たちの打ち上げに参加することになった。席は、僕と小野寺さんがとなりという配置になった。気まずい雰囲気の俺たちをおいて、2人はどんどん酒をあおる。次第に、晴彦さんが潰れて真矢さんが連れて帰るといういつもの流れとなった。俺も帰ろうとしたとき、晴彦さんが「キヨ!俺とシンが場所用意してやったんだから、逃げんなよ。」と釘を刺してきた。あの2人、やっぱり俺らを2人きりにしようとしてたんだ。晴彦さん、真矢さんに迷惑をかけた分、覚悟を決めないとと思い、俺は普段は飲まないビールを飲んだ。これが良くなかった。下戸の僕はぶっ倒れ、小野寺さんに介抱されて小野寺さんの家で目を覚ました。
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