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第41話

 大石と共にリツキの自宅へ向かい、詳しく話を聞いた。  リツキの証言によると、時刻は深夜一時過ぎで、場所はリツキの自宅近くの丁字路。不審者については、コートのフードを目深にかぶり、多少距離もあり暗かったので顔はよく見えなかったが、小柄で、男性に見えたという。ヘッドライトの光で車が来るのに気が付くと、車から身を隠すようにして逃げて行ったとのことだった。  リツキが住むマンションに至る道には、夜間でも営業している店のあるもう少し明るい通りがあるはずだ。現状、パトロールは増やせても、SPのように四六時中警護できるわけではない。できる限り外出は控えて欲しいが、出ざるを得ないときはせめて人目のありそうな場所を歩いて欲しいと重々言い聞かせてからリツキの部屋を辞した。  その足で、今度はリツキから聞いた、不審者の現れた場所へ向かう。  そこは周囲に古い家が多く、見通しの悪い細い道だった。  手分けして辺りを確認し、大石と情報を共有する。防犯カメラを備えた家も少なく、空き家もいくつか見受けられた。やはり、清水の殺害現場と重なる部分が多いようだ。 「なかなか人が通らないな。昨晩、車が通ったのは奇跡かもしれない」 「でも車が通っただけで止めるなんて、犯人は相当用心深い人物のようですね」 「だが……ここはあの公園と違って隠れられる場所が少ない。もしかしたら他にも目撃証言がとれるかもしれないな」  犯人が清水悠真の殺害現場付近に住んでいると仮定すると、徒歩なら急いだとしてもここから帰るのに三十分はかかるだろう。  犯人はリツキを尾けていたのか、通りかかるまでどこかに潜伏していたのか。どちらにしても深夜にバットを持った人物がいたら目に留まるはずだ。  リツキ曰く、バーで働いていて、酔っ払いの対応で逆恨みのように絡まれることもあるからユウマの事件とは関係ないかもしれないけど、とのことではあった。  しかし、清水悠真殺害の凶器はバットとされていて、現れた時間帯や、防犯カメラがなく人通りの少ない場所という状況も一致している。リツキが前端の関係者ということも含めると、これで別件と考えるのはなかなか難しい。  模倣犯の可能性もなくはないだろうが、報道されている情報からここまで状況を一致させるのは難しく、別人だったとしても関係者の可能性が高いと思われる。  一帯の聞き込みも大体終えたため、一度捜査本部に戻り、前端のチャンネル視聴者について調べているか確認した。  当然調べてはいて、担当になった捜査員が運営会社に問い合わせたが、視聴者の情報開示までは断られたとのことだった。  確かに、前端が指示した事件は全て不起訴、殺人事件への関与は今のところないという状況で、犯人の目星もついておらず令状もない。それで過去に特定のチャンネルを観にきた視聴者全てのデータをまとめて提出して欲しいなどと要請しても、難しいだろう。  しかし、赤穂としてはそこが一番怪しいと思っているのだ。 「(アキラの情報屋的な知り合いとやらならば、こんな情報も簡単に手に入れられるのだろうか……)」  ごく自然にそんなことを考えていて、ハッとした。  ただでさえいろいろと危ない橋を渡っているのだ。これ以上ダークサイドへ依存してはいけない。  ひとまず諦め、リツキの件を課長に報告して、本日の捜査は終了とした。  自宅へと戻る途中、つい考えてしまうのは、事件の解明にはやはりチャンネル視聴者の情報を得るしかないのではということだ。  第二の被害者が出るところだったかもしれないのだ。猶予はない。  明日の会議でリツキへの警護が手厚くなる可能性はあるが、前端の関係者は他にもたくさんいる。危険なのは彼だけではないだろう。  第二の被害者が出ることは、絶対に阻止したい。 「(そのためなら、使えるものはすべて使うべきなのでは……?)」  唆してくる弱い己の声に導かれるようにして、つい『SHAKE THE FAKE』まで来てしまった。  昨日の今日で、さすがにどうかと思う。  手段を選ぶべきか選ばないべきか悩んでいると、建物の入り口から人が出てきた。  その容貌は派手な衣装と相まって遠目でも目を引く。アキラだ。 「こんばんは、尊斗さん。こんなところに佇んでどうしたんですか。めっちゃ防犯カメラに映ってましたよ」  防犯カメラをリアルタイムで確認してるなんてヤクザの組事務所かとツッコミかけて、似たようなものだったと口を閉じた。  赤穂が言葉を呑み込んだのを見て、何を思ったのかアキラがはっと目を輝かせる。 「尊斗さん、まさか俺に会いたくて……!?」 「……通りかかっただけだ」  キラキラした瞳で見つめられて、思わず踵を返してしまった。 「待った待った。冗談ですって。俺今暇だし、ちょっと寄っていきません?」  ……が、呼び止められた。 「………………」  ここまで来た時点で、もう自分は己の弱い心に負けていたのだろう。  赤穂は誘われるがまま、『SHAKE THE FAKE』に寄っていくことにした。

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