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第1話

狙いを定め、獲物に弓矢を放つ。すると、鹿は倒れこみ動かなくなった。だいぶ大きな鹿だから、村の皆んなの食糧として充分だろう。仲間と共に村へと今日の成果を運ぶ。村へ帰ると、村人達が出迎えてくれた。 「お帰りなさい、ロキ!」 俺に許嫁のアリが駆け寄ってくる。 「ただいま、アリ。アリのお守りのお陰で無事に帰って来られたよ。」 俺がこういうと、アリは頬を染めた。そして、 「心配した。よかった帰って来てくれて。」 と、涙ぐみながら、抱きついてきた。明るく見送ってくれたけど、心配をかけてしまったのだろう。俺はアリの細い肩を抱きしめる。そうしていると仲間達から野次が飛んできた。 「おう、おう、お熱いね!お二人さん!」 「見せつけてくれるねー。羨ましい限りだ。」 アリは恥ずかしがって俺から離れてしまった。 「揶揄うなよ。アリが行ってしまったじゃないか。」 仕方がないので、俺は獲物を女性達に任せて、着替えに向かう。家に帰ると母が出迎えてくれ、俺の好きな温かいミルクを出してくれた。 「ごめんなさいね、ロキ。本当は村の入り口で出迎えたかったのだけど、お父様の調子が悪くてね。」 「気にしないで、母さん。ホットミルクありがとう。」 母からもらったホットミルクを飲み、急いできちんとした格好に着替えて父の部屋に向かう。今日の狩の成果を伝えるためだ。背筋を伸ばして父の部屋の前に立つ。 「ロキです。失礼します。お父様。」 俺が戸を叩くと、中から父が応えてくれた。 「入りなさい。」 父は、布団に腰掛けていた。流行病にかかり弱っているため、昔の歴戦の戦士はおらず、痩せた老人がいた。しかし、目の鋭さを衰えていない。俺は父の前に跪き挨拶をする。 「ただいま戻りました。」 「お勤めご苦労であった。無事に帰って来て安心したぞ。して、成果はどうだ?」 父は俺に労いの言葉をくれた。俺は狩の成果を報告する。 「有り難きお言葉ありがとうございます。鹿4頭、兎20頭、猪2頭を狩ることができました。」 「素晴らしい。その食糧があれば村は大丈夫だろう。お前は、立派な息子だ。」 尊敬する父からの言葉に身が引き締まる。狩を頑張った甲斐があった。 「ありがとうございます。これからもお父様に恥じぬよう、精進します。」 俺の言葉に父は嬉しそうにする。しかし、すぐに暗い表情をしてしまった。 「私がこんな有様だから、お前には苦労をかけてしまう。本当に申し訳ない。」 父が俺に頭を下げるので、俺は慌てて止める。父の代わりを任せられたとき、俺は誇らしかったのだ。だから、村長である父に頭を下げてほしくない。 「謝らないでください。私は、この役目を任せていただいて誇らしかったのです。それに、お父様が教育してくださったから、今の私がいるのです。」 父から俺は無理をしているように映るのだろう。父を安心させるため、もっと強い男にならなければ。今日も鍛錬をしよう。 父への報告を済ませて、村の広場に向かうとたくさんの料理や、酒が並べられ既に宴会が始まっていた。狩から帰って来た日は、ご馳走を無事を祝って食べるのだ。既に酔っ払っている仲間達が村人達に狩の様子を話している。 「こんなに大きな鹿にロキは狙いを定めた。鹿はロキに気づいて突進してこようとした。しかし、ロキは臆せず鹿の眉間に矢を放った。すると、シカはドサリと倒れこんだのさ。いやー、ロキの忍耐と狩の腕前は村一番、いや、王国一番だね!」 だいぶ、話が盛られている。大分、酔っ払っているのだろう。功績が勝手に作られていくのは、よくない。鹿は俺に気づいてなかったし、俺は腹を射ったのだ。訂正しなければ。 「鹿は俺に気づいてないし、腹を射ったよ。話を盛りすぎだ」 酒を持って仲間の所にいく。仲間は俺に気づいて、肩を組んでくる。そこに、アリもやって来て、取っておいてくれたのか、大きな鹿肉の入った皿をくれた。 「今日の功労者のお出ましさ!さぁ、乾杯の合図を!」 もうお酒を飲んでいるのに乾杯する必要があるのかとも思うが、村人達がグラスをもち乾杯する準備をしていた。だから俺はもっている酒を掲げた。無事に帰って来れ、仲間や村人と酒を飲めることが嬉しい。 「無事に帰って来れたことに感謝して、乾杯!」 その後も宴は夜遅くまで続き、村人達は潰れて外で寝てしまうものもいた。アリが宴の後、散歩をしようと誘ってくれたが、俺は鍛錬のために断った。父が弱っている今、この村を守るのは俺なのだ。しっかりしなければいけない。最近、近くの村が王国からの侵略を受けたらしい。その有り様は酷いもので女、子供関係なく殺されてしまったという。まだ俺たちの村は大丈夫だが、いつ王国が侵略してくるかわからない。村を守るため、俺は強くならなければ。いつもよりも長めに剣の素振りを行った。

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